エナメル質生検法
- 【読み】
- えなめるしつせいけんほう
- 【英語】
- enamel biopsy
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【同】エナメル生検法、エナメル質の酸溶解度検査
【定義】口腔内の歯のエナメル質表層より何らかの方法で試料を採取し、その化学的性状を検索する方法である
【意義・目的】エナメル質表層の酸に対する抵抗性を測定するのに有効であり、また酸によって溶出した各種元素の定量分析が可能である。
【検査法】検査歯の歯面に、過塩素酸、塩酸あるいは酢酸ナトリウム-塩酸緩衝液などに浸漬した一定面積の濾紙、セルロースアセテート膜などを一定時間貼布し、エナメル質を溶出させる。溶出液中には各種の元素が含まれており、カルシウム、リンの定量からエナメル質の溶解度を評価できる。つまり、エナメル質には約37%のカルシウムが含有しているとして、溶出したエナメル質重量を推算できる。カルシウムの定量は原子吸光分折法により、またリンの定量は分光光度分析法、原子吸光分析法によりそれぞれ測定される。フッ素の定量には以前はWhortonの微量拡散分析法を用いたが、現在はイオン電極法によって測定できる。フッ素処理されたエナメル質の溶解度の減少は先に述べたカルシウムの溶出量から知ることができる。さらにエナメル質の脱灰深度は次式より求められる。
D=W÷(2.95×0.37×A)
D:エナメル質の脱化深度(μm)
A:脱化面積(mm2)
W:溶出カルシウム受量(μ/mm2)
フッ素の他の微量元素としてZn、Mg、Na、Pb、Srなどの定量も可能である。
【結果・評価】齲蝕の感受性の一因として歯質の酸に対する抵抗性を評価する上で有効である。しかし、歯質のエナメル質表層に限局され、すべての元素を完全に回収し分析できない欠点がある。特に炭酸の分析は困難である。酸処理によるエナメル質の損傷程度は唾液による再石灰化現象により容易に回復しうるので、過度の脱灰をしなければ問題はない。