M.T.M.の診査
- 【読み】
- えむ.てぃー.えむ.のしんさ
- 【英語】
- examination of minor tooth movement cases
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【意義・目的】 患者の状態・希望と補綴・歯周病・外科治療などを考慮した総合的歯科治療の一貫として行われる非全体的矯正治療のことで、審美的、補綴前処置的、歯周疾患予防・治療予防のため、不正咬合防止、口腔外科前処置、矯正治療前処置や患者の希望などのために行われる。
【適応】
1)成人矯正治療
2)歯周病の予防と治療
3)補綴前処置治療
4)発育成長期歯列の不正咬合の予防
5)口腔外科前処置治療
6)矯正治療前処置治療
7)患者の希望
【診査法】
1.問診
患者の主訴は何であるのか、どのようにしてほしいのかを問診する(依頼である場合もある)。ここでM.T.M.で行うことが可能であるのか、それとも全体的矯正治療でなければ行えないものなのか、第一のスクリーニングを行う。
【評価】明らかにskeletal discrepancyやfacial profileにおよぶ改善を希望するものは初めに除外される。
また、限局性のものでも治療過程においてskeletal changeに関係すると思われるものも除外する。…deep OB OJ、X-Bite
2.不正咬合状態の診査
1)Angle classification
【評価】
full classII、full classIII:上下顎の歯数、歯幅に大きな異常のない場合、そのdiscrepancyが前歯-臼歯部広域にわたっているためM.T.M.の範囲外と考えられる。
super classI、classII tendency:each tooth size、ALD、anterior ratio値が上下顎臼歯関係を補償するようにでてくるか、現状維持することができれば、class 〈1〉と同様に考えてもよい。
2)各歯の位置異常
【評価】
舌側転位、唇側転位…各位置異常歯の歯根が矯正力による移動方向にあり、傾斜移動を行いやすいもの。1~数歯までで、移動予定歯槽部にスペースの確保できるものは、M.T.M.の適応と考えられる。歯軸傾斜が正常(歯根が転位方向にあるもの)で歯体移動を要求されるものは困難であると考えられる。
近心転位、遠心転位…同様に各位置異常歯の歯根が矯正移動方向にあるものが適応となると考えられるが、該当歯のその移動後に十分な保定処置を行うことができれば、歯軸傾斜が正常で歯体移動を要求されるものも対象となり得る。
低位歯…1歯ならば、その挺出に必要な力は小さいので適応と考えられる。しかし、数歯にわたり低位であるならば対象とはなりにくい。
高位歯…圧下に必要な力は大きくそのメカニズムも複雑なもの(臼歯挺出を伴うutility archなど)を必要とするためM.T.M.の適応範囲外と考えられる。
捻転歯…各歯の回転に必要な力はその歯根形態および歯根表面積に影響されるため、比較的その抵抗力が小さく、メカニズムも複雑にならない1~数歯までの前歯~小臼歯が適応になると考えられる。しかし、大臼歯はその大きい抵抗力のため抵抗源も多く必要とするためやや困難が予想される。
3)occlusal curveの診査
【評価】
Spees’ curve、reverse Spees’ curveとも、そのlevelingには咬合高径の変化を伴う治療となるためM.T.M.の適応外と考えられる。
4)overbite、overjetの診査
【評価】
deep overbite…その治療に際して後方臼歯部の挺出を含む咬合高径の変化(増大)を伴うことになるのでM.T.M.の適応外と考えられる。
negative overbite…その治療に際して後方臼歯部の圧下を含む咬合高径の変化(減少)および上下前歯部の広範な挺出移動を伴うことになるので適応外と考えられる。
severe overjet…deep overbiteを伴い、その治療に際して咬合高径の変化および多数歯にわたる前歯-臼歯部の移動を伴うので対象外である。しかし、上顎左右第二大臼歯の軽度の唇側傾斜、下顎左右第二大臼歯の軽度の舌側傾斜はelastics、finger wiresなどでM.T.M.可能と思われる。
3.機能咬合診査
【評価】
1)早期接触の診査
centric relationから誘導した閉口路上にて、1歯または極少数歯に明らかに限局してpremature contactが現われた場合で、その該当歯の明らかな位置異常があるならば、M.T.M.の対象となり得る。しかしそれが、大きく位置異常のない前歯部および最後臼歯部に現われた場合は、その治療において前者では近遠心方向、後者では左右側方向への変化および咬合高径の変化が予想され、その診断も難しい場合が多く対象外と思われる。
2)側方運動
同左右側方運動時にbalancing siteにおいて1歯またはごく少数歯にbalancing contactが認められ、それがごく軽度の回転、挺出、圧下、唇・舌・近・遠心移動にて解除できるとすれば、対象となりえる。しかし、複数歯、特に大臼歯にわたったものは対象外と考えられる。
4.歯周組織の診査
1)口腔内清掃状態の診査
特に、不正位置歯とそれによって引き起こされている自浄低下域について診査する。
【評価】3低位唇側転位または前歯部広域の叢生により引き起こされている自浄域低下……A.L.D.値にかかわらずM.T.M.の適応範囲外である。
接触点不良により引き起こされている自浄域低下……1歯であるならばrootのtippingにより同回復は可能であるが、数歯以上に及ぶものは全体的矯正の対象になる。
1歯~ごく少数歯の唇・舌側転位により引き起こされている自浄域低下……2-2)の条件を満たすものはM.T.M.の対象になり得る。