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LDH-アイソザイム

【読み】
えるでぃーえいち-あいそざいむ
【英語】
LDH-isozyme
【辞典・辞典種類】
歯科臨床検査事典
【詳細】
【同】乳酸脱水素酵素アイソザイム
【定義】LDHは分子量約140000、4個のsubunitから構成されるtetramer(4量体)であるが、このsubunitに、アミノ酸組成の異なるH(心筋)型とM(骨格筋)型の5種類の組合せが生ずることにより、都合LDHには5つのアイソザイムLDH1,2,3,4,5が存在する。
 電気泳動的には、易動度の速い分画から、それぞれLDH1(H4)、LDH2(H3M1)、LDH3(H2M2)、LDH4(H1M3)、LDH5(M4)と命名されている。LDH総活性が量的検査であるのに対し、LDHアイソザイムは質的検査であるといえる。
【意義】LDHは腎、心筋、肝、脾および骨格筋などに分布し、組織の壊死崩壊の程度に比例して血中に逸脱し出現する。本来同じ基質に働く酵素でありながら、各臓器間でそれぞれ特有のアイソザイムパターンを示すために、血清中のこれらアイソザイム分画像から、臓器診断あるいは病態診断、また遺伝的診断にも役立つ。
【適応疾患名】各種肝疾患のほか、心筋梗塞、悪性貧血、溶血性黄疽、肺梗塞、白血病などに特有の分画パターンを示す。
【正常値】寒天ゲルなどを支持体として、血清を電気泳動法で分画すると、陽極側から易動度の速い順にLDH1,2,3,4,5に分けられる。正常血清ではLDH1,2,3分画が多い。
【評価】急性肝炎では初期に肝由来のLDH5が増加し、LDH4<LDH5となる。これはLDH総活性がすでに正常化した肝炎の症例にも認められ、診断学的価値があると考えられている。しかしGOT、GPTなどとともに、一旦増加したLDH5が数日以内に減少する傾向を示す症例は予後が悪い。すなわちLDH5の異常高値は肝細胞の壊死を意味するものであるが同時に、このような短時間での酵素活性の減少は肝細胞壊死による酵素の枯渇を示すものと思われる。
慢性肝炎および肝硬変でもLDH5の増加がみられるが、前者ではLDH1<LD3の傾向を示すのに対し、後者ではLDH1>LDH3と逆のパターンを示すことが多い。原発性肝癌と転移性肝癌ではともにLDH3が著明に増加するが、前者がLDH4<LDH5の傾向を示すのに対し、後者はLDH4>LDH5の態度をとるのが特徴である。また、生検以外では診断がつきにくい脂肪肝ではLDH5のみが増加するので鑑別上参考になる。
 このほかLDHアイソザイムの診断的役割については、LDH1が心筋梗塞、悪性貧血、溶血性黄疽および人工弁置換術後患者で著明に増加し、これにうっ血性肝障害などを伴うとLDH5も増加する。