音声周波数分析検査
- 【読み】
- おんせいしゅうはすうぶんせきけんさ
- 【英語】
- sound spectrograph、SG
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【同】声紋、ソナグラフ
【定義】音声を周波数分析して、それぞれの音響学的特徴を示すパターンとして表わすもの。通常は、三次元で縦軸に周波数、横軸に時間、パターンの濃淡で振幅の大小を表わす(sonagram、声紋)。
【意義・目的】音声を図化し、視覚的に認識することによって音の特徴や異常を検査できる。分析パターンには、個々の音の種類や性質を示す要素と各個人の声や話し方の特徴を表わす要素の両面が含まれている。したがって、音声から発音者を同定するために用いられる。一方、発音障害の診断や歯科治療に伴う発音の変化や治療効果の評価にも利用できる。
【適応】発音障害
【正常値】各音の声紋パターン
1)母音[i、e、a、o、u]では、声帯の振動数に対応する基音とその共鳴による倍音からなっている。倍音の中でも声道の固有振動数に近い周波数帯域の成分が増幅され濃く描かれる。これがホルマント(Formant)で、周波数の低いものから順にFI~IVと呼ぶが、特に、FIとFIIとの組み合わせで母音の種類が識別できる。
2)母音様子音[m、n、r、ŋ]は、母音に類似して基音と倍音が見られるが、構造ははるかに単純で、鼻音[m、n、ŋ]では低い周波数成分のみである。
3)無声破裂音[p、t、k]では、気道の閉鎖による空白の後に短い雑音成分(spike file)がみられる。後続母音への移行部の第2ホルマント(transition)の先端が向かう周波数は子音によって異なり、音の区別ができる。
4)有声破裂音[b、d、g]では、spike fileの前に声帯の振動を表わす基音と低い周波数の倍音(buzz)がみられる。
5)無声摩擦音[φ、f、s、ʃ、ç、h]では、幅の広い雑音成分がみられる。その中でもホルマント様の濃い周波数帯域があるが、その位置は音の種類によって異なっている。
6)有声摩擦音[v、z]では、摩擦音の前にbuzzがみられる。
7)移行音[w、j]では、母音と同様のパターンであるが、ホルマントが大きく移動する。
8)連合音[ts、tʃ]では、2種類の音が結合している。たとえば破擦音ではspike fileの直後に摩擦成分が続いている。