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家族歴

【読み】
かぞくれき
【英語】
family history
【辞典・辞典種類】
歯科臨床検査事典
【詳細】
【意義】疾患のなかには、それが本来の遺伝学的に規定されていることが明確にされている疾患は少なくない。さらに遺伝的調査によって、新たに遺伝疾患であることが立証され、あるいは発見されている疾患も増加しつつある。また遺伝的疾患ではないが、家系内に明らかに多発する場合もある。したがって、家族および血縁者のなかに類似した症状を呈する者があることを確認することによって、診断の糸口になったり、診断を確定する有力な根拠になったりすることは稀でない。家族歴の重要性は、このような事実に基づいて家族構成を聴取することからはじまる。
【家族歴の記録事項】最初に、患者の近親者に患者自身と似た症状を示すものがあるかどうかきくことは、最も簡単な方法である。次いで、血縁関係として両親、祖父母、同胞、配偶者、子、孫などを中心にして、その健康状態、罹患した疾患、生死の有無、死因、死亡時年齢などを必要に応じて詳しくきく。この際、疾患名は、単に病名のみでなく、症状などもきいておくことが望ましい。これは病名の記憶が誤っていることもあるし、医師が何らかの理由で正しい診断名を患者に教えないこともありうるからである。特に遺伝に関係のあるもの、ないし体質性の疾患では、家族歴の範囲を拡大して遠い関係の血縁者や、配偶者の関係なども確認しておくことが望ましい。この際、家族や近親者を直接に診察することが必要のこともある。このためには、それらの人の来診を求めるばかりでは不十分で、こちらから出かけるか、遠いところであれば現地の医師に依頼して調査してもらうこともある。これらを基にして、家系図を作成し家族構成の理解を容易にする方法がなされる。この際に、家族や近親者を調査することを必要と認めさせた最初の手がかりとなった者(患者)を発端者という言葉で表わしている。
 家族的に発症する疾患は、必ずしも遺伝性とは限らず、生活環境を同じくしたために家族内発生を来すことがあり、特に特種な感染性疾患では、家族内感染が起こったために、遺伝と関係があるように考えられることもある。また地域性によっては、食餌性の因子などによって特異な疾患を発症させることもある。
 しかしながら、近親者の健康状態について、必要以上に尋ねることは、ときとして個人の秘密に関係し、プライバシーの侵害につながることもあるので、必要最小限とし、また何故にその情報が必要であるかを十分に説明して納得してもらうことが必要である。