血液凝固阻止法
- 【読み】
- けつえきぎょうこそしほう
- 【英語】
- anticoagulative method
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【同】抗凝固剤療法
【定義】抗凝固剤を使用して、血液の凝固を抑制する方法。歯科一般の治療で抗凝固療法を行うことはない。
【意義・目的】口腔悪性腫瘍患者で動脈内にカニュレーションを行って、抗腫瘍剤などを持続的に注入する療法を行う場合には、動脈内に挿管してある管が血栓で閉塞しないように、ヘパリンなどを併用して血液の凝固性を抑制する。一方なんらかの機転で、生体内の凝固亢進が起こり、多数の血栓が形成され、このために血中からフィブリノーゲン、血小板、凝固因子が消費されて減少し、二次的線溶が起こって、出血傾向と重篤な臓器の循環障害を起こす症候群がある(DIC:血管内凝固症候群disseminated intravascular coagulation syndrome)。このDICでは血栓溶解の目的で抗凝固剤療法が採用される。
【適応疾患名】歯科一般治療では、抗凝固剤療法を行うことはないが、抗凝固療法施行中の患者を治療する頻度は高い。特に観血処置を行う場合に問題となる。抗凝固剤療法が行われる疾患としては、心筋硬塞、狭心症、リウマチ疾患、脳血管障害、バージャー病、人工弁や人工臓器使用患者、長期臥床患者などがある。
【抗凝固剤の作用機序】抗凝血剤としてはヘパリン、ワーファリン(R)が繁用されている。ヘパリンの抗凝血作用はAT-IIIの存在下に、トロンビン複合体を作り、トロンビンの蛋白分解作用を阻止する。トロンビン以外の活性型凝固因子阻止作用として、AT-IIIはfatorXa、IXa、XIaを阻害することが確認された。
経口抗凝固剤としては現在Dicumarol(ワーファリン(R))が繁用されている。経口抗凝固剤は、十二指腸から吸収され、3~9時間で最高血中濃度を示すので、投与後効果発現までには1.5~2日の日数が必要である。
ワーファリンの抗凝血機序はビタミンKとの競合的阻害によって、凝固酵素の産生障害が生ずるためで、その影響は半減期の早いものから順に、F.XII(1時間)、F.IX(2時間)、F.X(48時間)、F.II(60~70時間)で減少する。経口抗凝固剤服用中の患者に口腔観血処置を行う場合に、そのまま投与を断続するか、減量して断続するか、あるいは一時中断すべきかの判断は、現在においても統一した見解は得られていない。われわれはワーファリン投与量を減量、中断しなくても安全に口腔観血処置が遂行できることを解明した。