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血清コリンエステラーゼ

【読み】
けっせいこりんえすてらーぜ
【英語】
serum cholinesterase、ChE
【辞典・辞典種類】
歯科臨床検査事典
【詳細】
【定義】コリンエステラーゼ(以下ChEと略)とは、コリンエステルをコリンと有機酸に加水分解する酵素をいう。
【生体内分布】生体内では、神経・筋肉組織にあってアセチルコリン(以下Achと略)を特異的に分解する特異的(specific or true)ChE、および血清・肝・膵などにあってAchや他のコリンエステル・非コリンエステルを非特異的に分解する非特異的(non-speciffic)または偽(pseudo)ChEの二種類のコリンエステラーゼがある。血清コリンエステラーゼは、後者に属する。
【意義・目的】血清ChEは、肝で合成された後に血中へ遊離され、肝実質細胞の機能と平行するので、主として肝機能倹査の1つとして使われる。
【適応疾患名】
1)肝疾患および二次的肝機能障害(脂肪肝は除く)。
2)抗ChE剤投与時および農薬(有機リン)中毒。
3)先天性偽ChE欠如症(非定型ChE保持者)。
4)ネフローゼ症候群。
5)甲状腺機能亢進症。
6)脂肪肝。
ChEは1)~3)では低下、4)~6)では上昇する。
【正常値】測定法によって、数値・単位が著しく異なる。フェノール・レツド比色法(柴田・高橋ら)では、△pH/時間=0.8~1.1、チオコリンエステルを基質とする方法(五味ら)では、3500~6000U/l、コリンオキシダーゼを利用する酵素法(市販のキットあり)では、782~1494U/l。
【結果・評価】
1)低下する場合:肝実質細胞障害(機能低下)および肝での蛋白合成能の低下を示す。急性・慢性肝炎、肝硬変、肝癌などが、これに該当し、これらの場合、他の肝機能検査より鋭敏かつ早期に低下が認められる。特に慢性・びまん性の肝障害で低下が著しい。他疾患に原因がある肝機能低下や低栄養状態でもChEの低下がみられる。
農薬のうち、有機リン剤による中毒では、ChEの低下で、診断が確定される。
先天性偽ChE欠如または非定型ChE保持者では、ChE活性の著しい低下があり、サクシニルコリン(筋弛緩薬、血清ChEで分解される)により遷延性無呼吸が起こる。
2)上昇する場合:ネフローゼ症候群では、血清アルブミンが減少するのに反して、ChE活性が著しく上昇するのが特徴的である。その他、甲状腺機能亢進、脂肪肝、肥満、糖尿病、高血圧などでも、この活性が上昇することが多い。
*この種のChEは、シブカインによる阻害が、正常のものより少なく、いわゆる“dibucaine number”の低下として表現される。