歯髄診断器
- 【読み】
- しずいしんだんき
- 【英語】
- electric pulp tester
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【目的】歯髄の生死、疾患の程度などの診断は、歯髄が硬組織で被われているため、視診などで簡単に知ることが難しい。そこで、日常臨床では外部から刺激を与えそれに対する反応によって、歯髄の状態を知る診断法が試みられている。このうちの1つに電流を応用したものが、電気歯髄診断器である。電流による歯髄の刺激は、歯髄を損傷することがなく、刺激量の数量化が可能という特徴を有している。とはいえ電気歯髄診断器で正確に知ることができるのは、歯髄の生死の判定に限られている。歯髄の疾患によって、歯髄の電気抵抗値が異なることから、歯髄の疾患にも判定しようとする試みがなされているが、現在のところ臨床で応用するまでには至っていない。
・電極および本体の構造
刺激用出力を導く電極は、歯に接する関電極の軸部に不関電極が組み合わされ、ここから電極を把持する術者の手指を介して、患者の皮膚または粘膜に接触するものと、関電極と不関電極を別のコードで本体に接続し、不関電極には湿らせたガーゼを巻いて患者が手で握るものとがある。
・電気的特性
診断器の電気的特性は、出力電圧、波形、繰り返し頻度、出力インピーダンスなどが刺激効果に影響を与える。歯髄の生死の判別は、電流による刺激がある範囲の中で反応を示せば生活歯、反応がなければ失活歯と判定する。
・出力波形による分類
1)50Hz(60Hz)正弦波を用いるもの:遠藤式交流型歯髄診断器。
2)誘導コイルの二次側に生ずるスパイクを利用するもの:Vitakometer(Burton)。
3)電子回路で作った特殊な波形を用いるもの:Dentotest(Malek)、Pulp Tester(Analytic Technology)。
【歯髄診断の適応症】
1)歯に変色があり、歯髄壊死の疑いがあるとき。
2)外傷を受けた歯で、歯髄壊死の疑いがあるとき。
3)レジン、アマルガムで歯冠修復された歯で、歯髄壊死の疑いがあるとき。
4)齲蝕に罹患している歯で、歯髄壊死の疑いがあるとき。
5)生活歯髄切断後の治癒経過を診査するとき。
6)浸潤麻酔、伝達麻酔などの効果発現状況を知りたいとき。
・被検歯が生活していても反応を示さない場合
1)外傷を受けた直後の歯。
2)歯根末完成歯。
3)複根歯の1根のみ壊死している歯。
【検査法・結果・評価】
1)患者に診査の目的を説明し、被検歯に違和感(熱感)を感じたら、ただちに手を上げるよう指示する。
2)関電極の先端に歯磨剤のような電導性ペーストを少量付着させる。
3)被検歯をロール綿などで簡易防湿し、気銃で歯面を乾燥する。
4)不関電極を保持する手の指で患者の皮膚または粘膜に触れ、関電極を被検歯の唇側または頬側面の近心的中央で、切縁または咬合面から歯冠の1/2の部位に接触させる。
5)患者が合図したときに、関電極を歯から離し、表示の数値を記録する。
6)対照歯について同様に測定する。
7)反応が認められれば生活歯髄と判定する。