重炭酸イオン
- 【読み】
- じゅうたんさんいおん
- 【英語】
- bicarbonate
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【同】炭酸水素イオン
【意義・目的】生体では好気的代謝により炭酸ガスCO2が産生され、脂肪・糖質の完全燃焼で、CO2とH2Oになり、1日のCO2の産生量は13000~15000mMにもなる。産生されたCO2は肺により体外に排出されるが、一部は血漿中で水と結合し、炭酸H2CO3となる。H2CO3は解離定数Kに従って、H+とHCO/3とに解離する。CO2+H2O⇔H2CO3⇔H++HCO/3
体液の濃度は、H+濃度(H+)かまたはpHであらわされる。Henderson-Hasselbalchの式より
〔H+〕=K〔H2CO3〕/〔HCO/3〕 pH=pK+log〔HCO/3〕/〔H2CO3〕
ここで(H3CO3)は溶液中のCO2濃度と関係し溶解によって(H2CO3)とみなしうる、このCO2濃度は、炭酸ガス分圧PCO2と血漿への溶解係数αにより決まるので
pH=pK+〔HCO/3〕/α・PCO2
と表現できる。すなわち血漿のpHは(HCO/3)と(H2CO3)あるいは、PCO2の比で決まる。炭酸緩衝系のpK=6.1で、正常のpHは7.4であることから(HCO/3)と(H2CO3)の比は20:1であり、これを維持するように、肺はPCO2を、賢は(HCO/3)を調節している。したがってpH、PCO2、(HCO/3)のうちいずれか2つがわかれば他の1つは計算できる。このように体液の代謝性塩酸基平衡障害の有無と程度を調べるのが(HCO/3)測定の目的である。
【検査】現在、直接測定する方法がないので間接的に測定する。ガラス電極法により測定したPCO2とpHからHenderson-Hasselbalchの式を用いて(HCO/3)を算出する。
【正常値】(HCO/3) 21~27m mol/l
【結果・目的】
1)(HCO/3)が低下する場合:代謝性アシドーシスによることが多いが、呼吸性アルカローシスに対する腎性代謝によることもある。代謝性アシドーシスは腎不全、糖尿病性ケトアシドーシス、乳酸性アシドーシス、尿細管性アシドーシスで起こり、呼吸性アルカローシスは、過呼吸によるCO2の過剰排泄により起こる。
2)(HCO/3)が上昇する場合:代謝性アルカローシスは嘔吐、下痢、利尿剤の投与などにより、血中H+だけでなくK+やCl-が失われると(HCO/3)が一次的に増加する。二次的に増加するのが呼吸性アシドーシスで、呼吸障害のために血中CO2が蓄積し、pHが低下する。腎臓の代償機能によって尿細管のHCO/3の再吸収が亢進し、血中(HCO/3)が上昇する。