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咀嚼能率(効率)検査

【読み】
そしゃくのうりつ(こうりつ)けんさ
【英語】
masticatory efficiency, masticatory performance
【辞典・辞典種類】
歯科臨床検査事典
【詳細】
【意義・目的】咀嚼機能は歯の数、咬合接触の状態、歯や歯周組織の状態、咀嚼力(咬合時に発揮される咬合力)、舌の巧緻性、唾液分泌量など、顎口腔系諸組織および器官の多数の因子により大きく影響される。また、この咀嚼機能を評価することにより、顎機能異常の診断や補綴治療の効果判定などを行うことも可能である。このためには、咀嚼機能を客観的に評価する方法が必要となる。この1つとして、咀嚼による仕事(食物の粉砕)の能率、すなわち咀嚼の効率の程度を比較する方法がある。これが咀嚼効率(能率)検査と呼ばれるものであり、一定の回数の咀嚼によって、定めた食物の一定量が粉砕された程度をふるい分けによって測定する方法である。
【検査方法】一般的には、ピーナッツ、生ニンジン、生米などを一定回数咀嚼させ、ふるい分け方法により粉砕粒子の大きさを調べる方法が行われている。すなわち、Manlyらは、ピーナッツ3gを咀嚼回数20回で咀嚼させ、全摂取量に対する10meshのふるいを通過した量の乾燥重量%あるいは容量%(食品を目盛りつき遠心沈澱管で、1500回/分、3分間遠心沈澱させる)、生ニンジン3gを咀嚼回数40回で咀嚼させ、全摂取量に対する20meshのふるいを通過した容量%、すなわち咀嚼値(Masticatory performance)から咀嚼能率を判定している。一方、石原は2gの生米を咀嚼食品として用い、咀嚼回数とふるい上%の間には各ふるいについてy=10-at(t:咀嚼回数、a:常数であり篩径および個人に関する咀嚼指数、y:それに対応するふるい上%)の指数関係があることに着目し、平均正常歯列者の咀嚼指数に対する被験者のそれの百分率を咀嚼効率としている。なお、これらのほか、ATP顆粒を咀嚼させ、崩壊したATP量を吸光度法により測定する方法や咀嚼試験料として種々の印象材や高分子樹脂などを用いる方法など、咀嚼能率検査に関しては数多くの報告がなされている。
【結果・評価】咀嚼機能を咀嚼値、咀嚼指数で表示することにより、顎口腔系組織・器官の状態と組織能力の関係、または正常歯列者と各種義歯装着者や歯牙欠損者との咀嚼能力の比較、あるいは義歯に対する慣れ、人工歯の咬合面形態、義歯床面積、咬合面接触面積、咬合面の位置など義歯の咀嚼能率に関与する諸因子を比較することができる。しかし、咀嚼の意義は単に食物を粉砕することだけではないこと、義歯の装着に際しては健全な残存諸組織の保全を第一義に考えるべきであることなど、単に咀嚼効率のみで咀嚼機能を評価することには問題が残る。