咀嚼能力検査
- 【読み】
- そしゃくのうりょくけんさ
- 【英語】
- evaluating method for masticatory function
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【意義・目的】咀嚼とは食物の口腔内への取り込みから切断および粉砕、さらには唾液との混和、食塊の形成、そして嚥下に至るまでの一連の生理的過程であり、この機能は歯(歯根膜)、顎関節、筋およびその周囲組織・器官とこれを統合する中枢神経機構によって発現する。したがって、この能力は咀嚼に関与している組織・器官の状態によって大きく影響され、顎顔面欠損、多数歯欠損、顎変形症、顎関節症、神経疾患などを有する患者の咀嚼能力は正常有歯顎者に比べてかなり低下している。本検査は咀嚼機能、あるいは機能障害の程度、治療効果などを総合的、客観的に判定することを目的としており、咀嚼能率(効率)検査もこの1つに含まれる。さらに、咬合力の測定、咀嚼運動時の下顎運動軌跡の分析や咀嚼リズムの検査も広義には本検査の1つであると解釈できる。これらとは別に、実際に摂取可能な食品をアンケート方式で調査し、その結果から咀嚼能力を推測する方法がある。この方法は特別な機器を必要とせず、非常に簡便な咀嚼機能の検査法であり、咀嚼機能の総合的な判定には有効な情報を与えるものである。以下にこの検査法について解説する。
【検査法】物理的性質(texture)や嗜好性、義歯の改善により摂取が可能となりやすいか否か、などが検討された食品を数十品目並べた質問表に対し回答させ、これをあらかじめ用意してある摂取難易度表と照し合せ、標準的な全部床義歯装着者の平均と比較して、回答者の咀嚼能力を評価する方法である。さらに、得られた回答結果から個人における咀嚼能力を点数化して表示する試みもなされている。なお、摂取難易度表は心身ともに大きな異常は認められず、口腔内の状態も無歯顎であるが、形態的にも機能的にも平均的な全部床義歯装着者群より得られた回答結果を分析して定められている。
この種の質問表としては山本式(咬度表)、顎義歯装着者用なども報告されている。
【結果・評価】顎顔面欠損患者や無歯顎患者における咀嚼機能は義歯の安定性や適合性、顎堤の形態などの患者の咬合圧負担能力や義歯に対する巧緻性などのほかに心理的因子も関与しているため、総合的な評価が必要である。この点から、摂取可能な食品をチェアサイドで質問する方法も有効な検査法である。この場合、質問に用いる食品についての検討、患者から得られた結果を比較できる評価基準の設定が必須である。