唾液のpH試験
- 【読み】
- だえきのぺーはーしけん
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【意義・目的】唾液のpH試験は、齲蝕活動性試験の1つとして、唾液中の耐酸性菌である乳酸稈菌などを選択的に培養し、その酸産生度(すなわちpHの変化など)から細菌の多少を知り、齲蝕の活動性を考えるものである。唾液を試料とする齲蝕活動性試験には、酸産生能試験としてのSnyder testや脱灰能試験としてのFosdick test、あるいは緩衝能試験としてのDreizen testなどのほかにもいくつかの試験法が行われる。さらにまた考えておくべき点として、齲蝕活動性とは、ある時点でその生体が齲蝕に罹患しやすいかどうか、あるいはすでに発生した齲蝕が進行しやすいかどうかといったことを意味することから、齲蝕活動性試験では唾液以外にも、齲蝕の発生に関与することが考えられる歯苔などを試料とするテストもあわせて行い、総合的に判断することが大切である。
1)スナイダーテスト Snyder test
唾液を試料として、それを培養してそのpHの変化により齲蝕の活動性を調べるテストである。
培地(肉汁ブイヨン1000ml、ブドウ糖25g、寒天20g、BCG(0.04%溶液)50ml)を乳酸でpH5.0に調整したものを滅菌し、50℃まで冷却した段階で、培地5mlに唾液0.2mlを加えて攪拌する。培地が凝固するのを待ち、それを孵卵器に入れ、37℃で培養。以後、24、48、72時間後の培地中のpH指示薬BCGの青→緑→黄色への変化度を観察する。
【正常値・結果・評価】
色の変化による評価では、
陰性
青色
青色、少し黄味を帯びる
陽性
黄色、少し青味を帯びる
黄色
濃い黄色
時間との関係による評価では、
24時間で陽性変化:強陽性(2+)
48時間で陽性変化:陽性(+)
72時間で陽性変化:疑陽性(±)
72時間で陰性:陰性(-)
と判定する。
2)フォスディックテスト Fosdik test
口腔内を水で十分洗口後、パラフィンを咬んで唾液を採取する。25mlの唾液に対して、12.5gのグルコースと、0.1gのリン酸カルシウム(もしくは、100℃乾燥後、30meshにしたエナメル質粉末)を加える。37℃で4時間培養し、培養前後の唾液中カルシウム量を比色法、EDTA測定法、厚子吸光法などにより測定し、カルシウム増加量をみる。
【結果・評価】本法は唾液中の酸産生菌によって作られた酸によりエナメル質が脱灰され、その結果カルシウムが溶出するので、そのカルシウム量を測定するもので、溶出カルシウム量が多いほど、齲蝕活動性が高いと判定する。
カルシウム増加量 齲蝕活動性
0~5mg -
5~10mg +
10~20mg 2+
20~30mg 3+
30mg以上 4+
3)ドライツェンテスト Dreizen test
唾液は通常そのpHを6~7程度に保とうとする緩衝能がある。そのため、歯垢中の酸に対しても唾液の緩衝能が関与して、齲蝕の発生に対し抵抗的に作用するかも知れないと考え、唾液の緩衝能力を調べるものである。
唾液10mlをビーカーにとり、マグネチックスターラー(R)で攪拌しながら1/10N乳酸で滴定し、pHメーターで唾液のpHの変動を観察。唾液のpHが4.0になるまで経過を観察し、pHが7.0から6.0になるまでに要した1/10N乳酸の量(ml)を小数点以下3位まで求め、その数値が唾液の緩衝能を示すものとする。
【結果・評価】緩衝能の強い人は齲蝕感受性が低く、弱い人は感受性が高いのではないかと考える。
S.Dreizen(1946)によると、1/10N乳酸容量と齲蝕活動性の間に次のような関係があるとしている。
乳酸量(ml) 齲蝕活動性
>0.615 -
>0.484 ±
>0.353 +
<0.353 2+
4)スワッブテスト Swab test
本法は唾液と歯苔の混合物を試料とし、歯苔が糖から産生する酸の量を調べるものである。
4か所の臼歯部頬側歯頸部を消毒綿花で1往復させるようにして拭って歯苔を採取し、37℃で48時間培養後、培地の色調の変化から齲蝕活動性を判定するものである。原理的にはSnyder testと同様である。またカリオスタットは本法の変法と考えてもよい。