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打診法(垂直、水平)

【読み】
だしんほう(すいちょく、すいへい)
【英語】
percussion(vertical、horizontal)
【辞典・辞典種類】
歯科臨床検査事典
【詳細】
【意義・目的】一般には体表を指または打診槌で軽く叩き、内部を推定するために行う打診法をさす。歯科(とくに保存)領域では、口腔内の歯を種々の方法で叩いて、そのときの痛みの有無により歯根膜などの炎症の診断に用いられる。
 根尖性歯周炎や外傷歯などは、打診に対し鋭敏に反応したり違和感を覚えるなど、患歯の確定診断ならびに症状の進行の程度などを診断するのに有効である。また、急性歯髄炎でも後期になると歯根膜炎を併発して打診に対する反応を示すことがしばしばある。なお、下顎骨骨髄炎の初期においては、患歯より前方数歯にわたり打診に対して鋭敏(弓倉氏徴候)となり、本症の診断に有効である。
【検査法】
1)打診に用いる器具には歯科用ピンセットや歯鏡、あるいは専用の打診器などを用いることもある。
2)打診には歯の切端あるいは咬合面から、歯軸に対して垂直方向から行う垂直打診と、唇頬頬側面ならびに舌側面から水平方向にて行う水平打診とがあり併せて行う必要がある。なお、場合によっては近遠心的な方向からも行う。
3)打診では歯を叩打したときの痛みの有無ならびに程度、性質を検査する。その際、打診音にも注意する。
打診時の注意として【1】患歯の疑われる歯をいきなり打診せず、正常な隣在歯や反対側同名歯などを対照歯として最初に打診し、患者に比較させる。【2】患歯の接触痛ならびに咬合痛を訴えている場合は、指で軽く打診し、硬い器具で強く叩打したりしない。【3】確実性を期するため、打診の順序を変えて行うことも必要。これにより、患者の先入観を除くことができる。
【結果・評価】一般に、打診に鋭敏となっている歯は、歯根膜に炎症が存在することを意味し、その場合、炎症の進行に従い、打診痛の程度も増す。痛みとまではいかないが、健全歯と比較して、多少異なる感じがする場合を打診違和感といい区別する必要がある。
 垂直打診に感じる場合は根尖部の炎症、水平打診に感じる場合は辺縁性あるいは根側性の歯周炎の存在を疑う。
 歯髄疾患で打診に対して反応するのは進行した急性歯髄炎や歯髄壊死などが多く、急性根尖性歯周炎も打診に反応する。また、慢性根尖性歯周炎では、ときに打診違和感を訴えることがある。
 打診音は、健全歯では澄んだ音が、歯髄壊死や根尖に大きな吸収性の病変がある場合などでは濁音を呈するといわれている。なお、打診音に関しては、近年機械的に解析する試みがなされている。