テイラー不安検査
- 【読み】
- ていらーふあんけんさ
- 【英語】
- manifest anxiety scale、MAS
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【同】日本版MMPI顕在性不安尺度
【目的】1953年、Taylor、J.A.は、顕在性の不安症状、すなわち患者が抱く不安感や慢性不安、身体的な病状への不安など明らかに意識されるものを測定し、その程度を明らかにする質問紙法のテストを開発した。オリジナルは、ミネソタ式多面的人格目録(MMPI)から、Cameron、N.の慢性不安反応に合致すると思われる50問の質問が選択されている。
阿部らは、これら50問に回答の妥当性を検出する虚構尺度を15問追加して、合計65問からなる日本版MASを作成し、標準化した。
顕在性不安の中で、身体的不安は身体各部の異常や疾患から生じ、身体的原因によらない不安は精神科的な問題である。このテストは、不安の種類や原因の考察を行うために不安の程度を測定する手段として、また慢性不安状態にある患者の治療経過を確認する指標として有用であると評価されている。
【検査法】テスト用紙はビニール袋に封入され、2つ折の用紙の内側が見られないようになっている。したがって、回答に際しては、ビニール袋の上からボールペンで強めに書くことをあらかじめ説明しておく必要がある。
合計65問に、「そう」「ちがう」のどちらか1つ、自分にあてはまるものに○印をつけさせるが、「どちらでもない」ときは両方に×印をつけるように教示する。
用紙の内側には、2色のカーボンで採点のための工夫が施されており、青色と赤色で複写された回答記号を数えて、無応答数(?)、虚構点(L)、不安得点(A)を算出する。
【結果・評価】無応答の数が10以上であったり、虚構点が11以上のときは、回答への妥当性や信頼性が低いものと判定して、可能ならば再検査をして確かめる。
阿部らは、多数例を対象として不安得点の分布を調べ、平均値と標準偏差から5段階の判定基準を作成している。男子と女子とでは、判定基準の同じ段階でも点数の範囲が異なるが、いずれも段階Iは高度の不安状態、段階IIは不安がかなり高く、段階III~Vはほぼ正常域と判定する。
このテストを用いることによって、ある時点での不安水準を量的に判断することができるだけでなく、前後の不安得点を比較して治療経過を判断する指標とすることにも有用である。一般には、初回検査時に不安得点が高い場合は予後不良であることが多く、治療経過中の得点の増加は治療の難渋と符合し、得点の減少は明らかに臨床的改善とみなすことができる。