トランスアミナーゼ
- 【読み】
- とらんすあみなーぜ
- 【英語】
- transaminase
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【同】アミノトランスフェラーゼ
【定義】トランスアミナーゼはアミノ酸とα―ケト酸との間で、アミノ基の転移反応を触媒する酵素である。約20種の酵素が知られているが、臨床的に重要なのは、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)とグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)であり、それぞれアスパルテートアミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の名称を用いることが推奨されている。
【意義・目的】GOTはL―アスパルテートと2―オキソグルタル酸間の可逆のアミノ基転移を触媒し、オキサロアセテートとL―グルタル酸を生ずる。GPTはL―アラニンと2―オキソグルタル酸間の可逆のアミノ基を触媒し、ピルビン酸とL―グルタル酸を生ずる。GOTは心筋、肝、骨格筋などに、GPTは肝、腎に多く含まれている。組織内での活性はほとんどがGOT>GPTでいずれも細胞内に存在し、血清中ではわずかな活性を示す。
臨床検査上、肝炎、心疾患、血液疾患の診断に繁用される。GOT、GPTはともにビタミンB6酵素で補酵素としてピリドキサルリン酸(PALP)を必要とし、生体内ではPALPを結合したホロ型と結合していないアポ型の両者が共存している。日本ではホロ型活性のみを測定している。
【検査法】GOT、GPTの基質、生成物はともにアミノ酸とα―ケト酸であるから、そのいずれかを測定するか、または共役酵素の補酵素NADH2などの変化量から酵素活性を測定する。
1)Karmen法(紫外部測定法の代表的な方法):GOTの場合、第1段階の反応で生成したオキサロ酢酸は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)と補酵素NADH2の作用により還元されリンゴ酸となり、NADH2は酸化されNADとなる。GPTの場合、第1段階の反応で生成したピルビン酸は乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)と補酵素NADH2の作用で還元され乳酸となり、NADH2はNADとなる。ここで、MDHとLDHおよびNADH2を過剰に加え、各々の基質の還元反応ならびにNADH2の酸化反応は定量的に進行するので、NADH2の酸化を340nmにおける吸光度の減少で測定するとGOT、GPT活性を測定したことになる。
2)Reitman-Frankel法(比色法の代表的方法):GOTの場合は生成したオキサロ酢酸、GPTの場合はピルビン酸を、2、4-ジニトロフェニルヒドラジンと反応させヒドラゾンを生成させ、アルカリ性でキノイド型(赤褐色)に発色させ、505nmで比色する。ケト酸の生成量を検量線から求め、紫外部法と対比させKarmen単位に換算して表わす。国際単位およびKarmen単位は、NADHの340nmでの吸光度の減少が、1分間で0.001あった場合の酵素量を1単位とする。
【正常値】
GOT 8~23(平均14.5)R-F単位
GPT 0~20(平均5.4)R-F単位
【結果・評価】本酵素は肝細胞障害の最も鋭敏な指標であり、急性肝炎、中毒性肝障害時には他の検査にさきがけて著明に上昇し(300単位以上のことが多い)、肝細胞障害度に比例することが多い。この際、GPT>GOTの傾向がみられ、回復とともに正常化する。これに反し、慢性肝障害や胆汁うっ滞症、肝癌などの上昇は一般に低い。GOT/GPT比は肝炎や胆汁うっ滞症では多くが1以上であるが、肝硬変などでは1以下の傾向があり、特に肝細胞癌では著明に増大する。また、慢性活動型肝炎では非活性型に比べ、この比率は低い傾向があり、その値の動揺が激しい、血清トランスアミナーゼ活性(特にGOTは心筋梗塞をはじめ多くの非肝病変で上昇するので注意を要する)。