軟化象牙質検査
- 【読み】
- なんかぞうげしつけんさ
- 【英語】
- softend dentin test
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【定義】齲蝕の治療に際し、病巣部を残留させずに完全に取り除くことにより、齲蝕の再発や変色、あるいは歯の破折などを招来させないようにすることを目的とする。
【適応】齲蝕歯において軟化象牙質の存在する歯を対象として行う(第2~3度齲蝕症)。
【検査法】
1)カリエスメーカー(R)(caries meter)による測定:齲窩と口腔粘膜との間のインピーダンスを測定し、齲蝕羅患性と齲蝕の進行度を知る目的で行われる。測定値が600kΩ以上のとき齲蝕はなく、インピーダンス値が250~600kΩの範囲のときはエナメル質齲蝕の存在を考え注意する。250kΩ以下のときは象牙質に達する齲蝕が存在するので、この際には軟化象牙質が存在すると考えるべきである。
2)軟化象牙質X線検査:軟化象牙質は健康象牙質よりも強いX線透過性を示すのでその部に軟化象牙質の存在を意識する。
3)軟化象牙質削除検査:軟化象牙質には知覚がないので、不用意に歯髄に圧力を加えない限り、患者に痛みを与えることはない。このことから探針などで軟化象牙質を探ることにより、軟化象牙質の存在を知る。軟化象牙質の削除に際しては、スプーンエキスカベーターによる方法や、小型の鋭利なラウンドバーなどを低速の電気エンジンと併用して行う方法、チゼルなどによる方法があり、急性齲蝕による軟化象牙質は表層の多菌層はチーズ様の強度を有し、スプーンエキスカベーターなどで鱗状削片として容易に切削できるが、健康象牙質に近づくにつれ硬度を増す。一方慢性齲蝕では、軟化象牙質も齲蝕の進行が遅いために再石灰化して、軟化象牙質状を呈して、ラウンドバーなどで粉状に削除される。また、1972年、米国のM. GoldmanとJ. H. Kronmanにより創製された、GK-101などがある。これはN‐グロルグリシンにより、軟化象牙質を無痛的、選択的に溶解し、除去可能となる。
4)軟化象牙質染色検査:これは齲蝕検知液(カリエスディテクター(R)(caries detector))を使用して行う。軟化象牙質は性質の異なる2つの層があり、表層は著しく脱灰破壊されて、もはや再石灰化しえない壊死層で、深層はある程度脱灰されているが、生活反応を有して再石灰可能の生活層すなわち第1層、第2層が存在する。第1層は完全に除去しなければならないが、第2層は可能な限り保存につとめる。その染別のため、現在は1.0%アシッドレッドのプロピレングリコール液による齲蝕検知液を用いる方法が行われている。本法によれば第1層は可染であり、第2層は染色されないため、この2層を判別し、第1層のみを除去する。その他、稀ヨードチンキを齲窩に塗布後、余剰の薬液をぬぐうと、象牙質は強く褐色に染まる。稀ヨードチンキ法や、1~5%硝酸銀溶液を齲窩に塗布すると、軟化象牙質が黒色を呈する硝酸銀法、あるいはキシレンを齲窩に塗布すると、軟化象牙質が暗色を呈するキシレン法などの染色試験法がある。
なお、健康な象牙質は淡黄色を示すので、歯質が茶色、褐色、黒色に着色している場合には軟化象牙質あるいは、それに近い病的象牙質が存在していることを疑う。