尿の沈渣
- 【読み】
- にょうのちんさ
- 【英語】
- urinary sediment
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【臨床的意義】尿の沈渣中には腎由来の各種円柱上皮、尿路各部から混入する血球成分、上皮細胞、腫瘍細胞、細菌などがある。また、尿自身から析出する各種結晶や、投与された薬剤の結晶などがある。
【適応】尿沈渣の種類や量を検査することは腎および尿路系疾患の種類や程度を知るうえからも、きわめて重要である。
【検査法】採取30分以内の新鮮尿を遠沈管(10ml)に採り、1500rpm(400~500G)、5分間遠心する。沈渣は一般に無染色で鏡検するか、特殊染色を施して鏡検する。
【結果・評価】
赤血球:肉眼的血尿(0.1%以上含まれている)、顕微鏡的血尿(0.1%以下)とがある。血尿では腎および尿路系疾患が疑われる。正常は1~2個以下/10視野。婦人尿では経血に注意。毎視野1個以上は病的。
白血球:腎炎、ネフローゼなどでは多くは単核である。腎結核・腎盂炎・膀胱炎・尿道炎では多形核のものが多い。血球や上皮細胞の鑑別にはSternheimer-Malbin法がある。白血球は濃染細胞、淡染細胞、輝細胞の3種に分けられ、活動性あるいは慢性腎盂腎炎の診断に有用。正常な場合は男性で1~2個/10視野、女性で1~2個/1視野であるが、女性では注意が必要。
上皮細胞:尿中の上皮細胞は変性を起こし、核も不明瞭であるが、その特徴から推測する。
小円形細胞;一般に腎細胞と呼び、尿細管に由来する。
移行上皮細胞;腎盂、尿管、膀胱などの移行上皮に由来する。腎・尿路系の炎症。
扁平上皮細胞;尿道、膣に由来する。
多核巨細胞;尿道由来で、ウイルス性感染症の尿中にみられることが多い。
異型細胞;腫瘍性の剥離細胞として尿中にみられることがある。Giemsa染色、Papanicolaou染色を施して診断する必要がある。
円柱;尿細管の疾患あるいは尿停滞、ネフローゼ、腎炎などの病勢、進行度などの参考となる。
粘液糸;肉眼的には雲翳(nubecula)としてみられる。尿路粘膜の炎症、腎盂炎、膀胱炎、尿道炎など。
脂肪、リポイド;腎上皮、白血球などが脂肪化したもの。
その他に生殖腺成分、寄生虫、酵母菌、細菌などがみられる。
結晶性沈渣:体内における塩類代謝、酸塩基平衡状態、尿中のコロイド状態に関連して尿中に出現する。ロイシン、チロシン、シスチンなどは肝実質障害で出現し重要でありWeiss法がよい。また、薬物の服用により結晶性沈渣を生ずることもある。尿酸、尿酸塩の検出にはMurexide試験法が用いられる。