梅毒血清学的検査
- 【読み】
- ばいどくけっせいがくてきけんさ
- 【英語】
- serologic test for syphilis
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【意義】梅毒は、spirochaeta pallida(Treponema Pallidum)によって生じるはなはだ慢性に経過する伝染病である。主として性交によって伝染する特殊な疾患であるため、社会的法律的問題も含めて梅毒血清学的検査には、特に慎重に対処しなければならない。しかも梅毒に罹患しても顕性症状を呈することが少なく、そのほとんどは血清学的診断によって判定されるので検査法の原理がまったく異なった2種類以上の検査をもって判定することが望ましい。
【検査法】梅毒に罹患するとその病原体に対応する抗体が発生し、その時生じる抗体は、糖体、蛋白、脂質などに対応するものが多く、抗原としてはTreponema pallidum(TP)の脂質およびウシより抽出されたcardiolipinを用いる。serologic test for syphilis(STS法)に分けられている。
TPを抗体とする方法は、特異性が高く、Treponema pallidum immobilization(TPI)、Treponema pallidum complement fixation(TPCF)、reiter protein complemt fixation(RPCF)などの方法があるが、Treponema pallidum haemagglutination(TPHA)法が精度も高く日常臨床に広く用いられている。
STS法は現在補体結合反応を応用したWassermann反応(緒方法)と沈降反応(梅毒凝集法、ガラス板法)に分けられ必要に応じて用いられている。また簡便で集団検診あるいは供血者などの検査にrapid plasma reagin test(RPR card test)も用いられている。
【判定】各検査法の判定もしくは評価として、いずれも陰性(-)、判定保留(±)、陽性(+)もしくは(1+、2+、3+)という判定がなされるが、あくまでも血清学的診断は補助的診断であり臨床的診断を優先させるべきである。梅毒の血清学的検査を行って各検査の総合判断としては、
1)STS法にて、2つ以上の検査結果が陽性の場合後天性梅毒(梅毒感染の機会があったもの)、先天性梅毒(血縁家族の検診の必要あり)および感染経路不明のものなどによる感染を考慮したほうがよい。しかし、老年者では特に疾患がなくともその出現が年齢とともに増すとされている。
2)STS法にて、2つ以上の検査結果が陰性の場合、臨床症状がない限り梅毒罹患が否定できるが稀にそうでないこともある。
3)STS法にて、2つ以上の検査結果が一致せず、いずれかの一方だけが陽性の場合は過去に梅毒罹患の既往があることが多い。しかし、他の検査法にて際検査をして判定しなければならない。
4)TPHAのみが陽性の場合以前に梅毒罹患の既往があり治療した患者に多い。