ビリルビン
- 【読み】
- びりるびん
- 【英語】
- bilirubin
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【意義・目的】ビリルビンは、1日に250~300mg生成され、その80~90%が網内系で赤血球の破壊によって遊離したヘモグロビンから作られ、遊離ビリルビン(間接ビリルビン)となる。遊離ビリルビンは血中アルブミンと結合して肝臓に運ばれ、グルクロン酸と抱合して抱合ビリルビン(直接ビリルビン)となり、毛細胆管を経て、胆嚢で濃縮され、十二指腸に排泄される。腸管内の抱合ビリルビンは、小腸下部や大腸の細菌の作用によって脱抱合と還元作用を受けてウロビリノーゲンに変化し、大部分は糞便中に排泄され、一部分は門脈から大循環に入り腎から尿中に排泄されるものと、腸管から再吸収され肝細胞に摂取され胆汁中に排泄されて腸肝循環に入るものがある。したがって、ビリルビンの分画と定量は黄疸の鑑別、ビリルビンの生成、処理などの代謝過程に関与する諸臓器の病態や経過を診断するうえで重要である。特に、溶血、肝、胆疾患の診断および経過の判定に重要な情報が得られる。
【適応疾患名】
1)間接ビリルビン増加性黄疸
【1】ビリルビン生成過剰:溶血性黄疸、シャント高ビリルビン血症。
【2】肝ビリルビン摂取障害:Gilbert病、Rotor型過ビリルビン血症。
【3】抱合障害:Crigler-Najjar症候群、新生児黄疸、薬物障害。
2)直接ビリルビン増加性黄疸
【1】抱合ビリルビンの移送、排泄障害:肝細胞性黄疸、Dubin-Johnson症候群。
【2】肝内および肝外胆汁石欝滞:原発性胆汁性肝硬変、閉塞性黄疸など。
【検査法】ビリルビン測定法には肉眼比色法、ジアゾ反応による比色法、分光光度法などがある。
1)Michaelsson変法(血清ビリルビン測定法)
【1】血清1mlにジアゾ試薬0.5mlを加え10分間放置する。(ジアゾ液I:II=10:0.25に混合)
【2】ダイフィリン試薬2ml(ダイフィリン20g+酢酸ナトリウム50g+水400ml)、アスコルビン酸液0.1ml(水酸化アスコルビン酸200mg+水5ml)、フェーリングII液1.5ml(水酸化ナトリウム100g+酒石酸カリウム+ナトリウム350g+水1l)を加え混和し吸光度を測定する。
2)Gmelin法(尿中ビリルビン測定法):Gmelin試薬(局方硝酸2~3mlに発煙硝酸2~3滴を加える)を試験管にとり、その上に尿を静かに重層し両液の境界面の色調で判定する。
判定:陽性の場合は、境界面に上から緑・青・紫・赤・黄色のリング状の着色が出る。ビリルビンは酸化して緑色のビリベルジンとなる。
【正常値】
血清総ビリルビン 0.2~1.0mg/dl
直接ビリルビン 0~0.4mg/dl
【結果・評価】血中ビリルビン値の大部分は1mg/dl以下で、体内溶血の亢進、肝内および肝外胆汁欝滞、肝細胞のビリルビン代謝異常などの場合に増加し黄疸を来す。体内ビリルビンの生成亢進や肝細胞の抱合化と摂取輸送過程に異常のある場合は総ビリルビン中の間接ビリルビンが80%以上の高ビリルビン血清になり、肝細胞の処理過程の異常、胆汁欝滞などでは直接ビリルビンが60%以上の高ビリルビン血症となり、黄疸の鑑別診断に利用される。血清中に直接ビリルビンが2.0~3.0mg/dl以上になると尿中に排泄される。
1)血清総ビリルビン濃度と黄疸の程度
1~2mg/dl:潜在性黄疸
2~10mg/dl:軽度黄疸
10~20mg/dl:中等度黄疸
20mg/dl以上:高度黄疸
2)血清総ビリルビン濃度と黄疸の種類
5mg/dl:溶血性黄疸
1~70mg/dl:肝細胞性黄疸
10~15mg/dl:閉塞性黄疸(不完全閉塞)
20~30mg/dl:閉塞性黄疸(完全閉塞)