フッ素の定量
- 【読み】
- ふっそのていりょう
- 【英語】
- detemination of fluorine
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【意義・目的】フッ素は人体を構成する微量元素の1つで、特に硬組織に多い。その生体作用として、歯質に作用して抗齲蝕性を示す。過量に摂取すると斑状歯や骨硬化症を発現し、また急性中毒を起こす。フッ素にはこのような利点および危険性があるため、水中のフッ素濃度、飲食物のフッ素含有量、歯や骨のフッ素含有量などが測定される。
【定量法】重量法、滴定法、比色法、ガスクロマトグラフ法、フッ素イオン電極法、X線マイクロアナライザ法などがあり、定量する試料の性状およびそのフッ素含有量により適切な方法が選ばれる。飲食物については、通常灰化したのち蒸留して試料とする。歯や骨については、乾燥試料を脱灰した溶出液を試料としたり、必要に応じて灰化・蒸留して試料とする。歯や骨の薄切片をX線マイクロアナライザにて定量分析することもあるが、必ずしも容易ではない。
【フッ素イオン電極法】フッ化ランタン(LaF3)単結晶膜を感応膜とする均一個体膜電極を、フッ素イオンを含む溶液に浸すと、フッ素イオンがLaF3膜内でイオン伝導体として鋭敏に反応し、単結晶膜を介して電極内(0.1M塩化ナトリウムおよび0.1Mフッ化ナトリウムを含む溶液)と電極外のフッ素イオン活量の差により電位差が生ずる。この電位差を測定するのがこの方法の原理である。測定時に、複合フッ素電極(米国ORION社、96-09型)を用いる場合は単一の電極でよいが、フッ素電極(ORION、94-09型)のみの場合は比較電極が必要である。本法は定量精度がよく、操作も簡単なので、水中のフッ素イオン濃度の測定に広く利用される。
【比色法】
1)スパンズ法(Whartonの定量法):飲料水中のフッ素の定量は、水質基準に関する厚生省令(昭和45年)により、スパンズ法で行うことが規定されている。原理は、Zr‐SPADNS試薬(メタル‐色素コンプレックス)にフッ素イオンを含む溶液を加えると、フッ素イオンがZrと結合し、液が褪色する。この褪色度を比色定量する。1~10μgの精度がある。
2)アリザリン・コンプレクソン法:工業用水および工業排水試験法に用いられる。