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プロトロンビン時間

【読み】
ぷろとろんびんじかん
【英語】
prothrombin time
【辞典・辞典種類】
歯科臨床検査事典
【詳細】
【定義】被検血漿に組織トロンボプラスチンを添加して、外因系の凝固因子としてII、V、VII、X因子などの異常を測定する方法である。
【意義・目的】PTには凝固因子と共通系病個因子が関与しており、凝固機序からみてこれらの凝固因子としてはVII、V、II、Iがある。
 臨床的にはこれらの因子の欠損症(先天性および後天性)があり、先天性では単一の因子欠損症であり、凝固時間が著明に延長する。一方、後天性では複数の因子欠損症であり、凝固時間が著明に延長する。一方、後天性では複数の因子欠損症であり、凝固時間の延長は軽度である。それらの多くは肝障害、ビタミンK欠乏症、DICなどにより凝固障害が起こる。肝障害ではII、X、I因子およびプロテインの産生障害により減少する。ビタミンK欠乏症ではその依存性因子としてII、VII、IX、X因子、およびプロテインCが肝臓での産生低下により減少する。
 ビタミンKは腸内細菌叢によってK1がK2に合成されないため、ビタミンK合成障害により肝臓での凝固因子の産生が障害されることになり、新生児メレナおよび広域抗生物質投与時にみられる。また、ビタミンK2は胆汁酸により腸から吸収されるので、胆汁酸の欠乏状態ではK2の腸からの吸収が障害される。臨床的には胆管閉塞により胆汁が排泄されない場合である。
 ビタミンK欠乏の母乳による乳児では、ビタミンK欠乏により肝臓での凝固因子の産生障害のために乳児の脳内出血を来すことがある。
 プロテインCはトロンビンと結合して、血管内皮細胞表面のトロンボモジュリンの促進作用を受けて活性プロテインC(activated protein C)となり、これはV、VIII因子の活性を阻止する。すなわち、プロテインCの欠損はV、VIII因子の作用を阻止しないために凝固亢進状態となり、また、先天性プロテインC欠乏症では家庭的に血栓を形成しやすい。
 DICでは、V、II、I因子およびプロティンCが消費されて減少する。経口抗凝固薬(ワーファリン)の内服時には、II、VII、IX、X因子およびフロテインCが合成障害により減少する。また、阻止物質の出現としてSLE、分娩後に抗体としての阻止物質がある。
 PTは内因系の凝固因子としてのVII、XI、IX、VIII因子は関与しないので、これらの因子欠損症では正常値を示す。すなわち、血友病A、Bでは正常値を呈す。経口抗凝血薬はいずれもII、VII、IX、X因子を減少させるが、血栓、栓塞症の予防に経口抗凝血薬を投与するときには凝血能の管理に本法を用いるが、凝血能の治療域としては、PTで正常値の1.5~2.5倍とする。またXIII因子はフィブリンが形成されてから作用するので、XIII因子欠損症では正常値を示す。なお、無フィブリノーゲン血症では血液の凝固が認められない。
【適応疾患名】VII、X、V、II、I因子欠乏症。
【検査法】
1)まず、クエン酸ナトリウム加血漿を作製する。作製法は採取した血液9容に対して抗凝固剤の3.2%クエン酸ナトリウム1容の割合に静かに混和し、このクエン酸ナトリウム加血液を3000rpm、10分間遠心して血漿分離し、測定する時まで冷蔵庫(2~6℃)に保存する。
2)測定時にマイクロピペットを用いて血漿0.1mlをとり、小試験管(内径8mm、長さ75mm)に注入し、37℃で約3分間加温する。
3)37℃に保温したPT試薬と0.025M塩化カルシウム液との混合液0.2mlを添加すると同時にストップウォッチを始動させ、振盪して傾斜させながらフィブリンが析出するまでの凝固時間を測定する。
【正常値】目視法で10~13秒、器械法で9~12秒。
【評価】実際にはプロトロンビン時間が対照正常血漿として比較して1秒以内を正常値、2秒以上の差を呈したら異常値としている。