ベクトル心電図検査
- 【読み】
- べくとるしんでんずけんさ
- 【英語】
- vectorcardiography
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【定義】心周期の間に生ずる三次元的な心臓ベクトルを前頭面、水平面、矢状面への投影として二次元的に記録する方法である。
【目的・意義】通常の心電図と比較して、心室肥大、脚ブロック、心筋梗塞の診断に有効であるが、不整脈の診断には価値がない。
【誘導法】現在Frank法が最も広く用いられている。本法ではH:前額部または頸部、F:左足、I:右前腋窩線、E:胸骨の中心部、A:左前腋窩線、C:EとAのなす角の45°の点、M:脊柱の各所に電極を置き、これにより得られたベクトル環を前頭面、水平面、矢状面の3面に投影し、記録する。
【正常ベクトル心電図】
1)P環は心房の脱分極により生ずる。心房興奮は洞房結節から房室結節へと向かうので、ベクトルは下方、やや左、前方を向く。したがって、前頭面では左・下方、矢状面では下・前方、水平面では左・前方に位置するベクトル環がみられる。
2)QRS環は心室の脱分極により生ずる。まず心室中隔脱分による初期ベクトルは右・上・前方に向かい、次に心室の脱分極による主部ベクトルは左・下・後方に位置する。したがって、前頭面では、まず右・上方に向かい、次に左・下方に向く。水平面では、まず右・前方に向かい、次に左後方に向く。矢上面では、まず上・前方に向かい、次に下・後方に向く。
前頭面でのQRS環の軸は0~85°の範囲にあり、たいていは時計方向回転である。反時計方向回転あるいは8の字型を呈することもある。水平面では軸は+35~-45°の範囲にあり、つねに反時計方向回転である。矢状面ではつねに反時計方向回転を示す。
3)T環は心室の再分極により生ずる。これはP環よりは大きいが、QRS環よりも小さい。このベクトルは左・下・前方に位置するので、前頭面では左・下方、矢状面では下・前方、水平面では左・前方に向かう。
【評価】ベクトル心電図の以上から次のことがわかる。【1】肥大(左室肥大、右室肥大)、【2】心室内伝導障害(左脚ブロック、右脚ブロック、末梢性左室内伝導障害)、【3】興奮伝導促進(WPW症候群)【4】心筋梗塞(前壁、下壁、側壁心筋梗塞)。