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補体価検査(血液、滲出液)

【読み】
ほたいかけんさ(けつえき、しんしゅつえき)
【英語】
examination of complement titer
【辞典・辞典種類】
歯科臨床検査事典
【詳細】
【同】CH50
【定義】 補体は、抗原抗体結合物などにより活性化され、種々の生物学的作用を発揮する。本検査は、血清中や疾病局所滲出液中の補体系異常を知るために、血中や滲出液中の補体レベルを調べる検査である。
【意義・目的】 補体が活性化されると血中の補体量が変化する。血清補体価は、すべての補体成分蛋白の活性および各種制御蛋白の活性をまとめて表すので、補体系の異常を記すクリーニング検査として有用である。補体価に異常があったとき、どの蛋白に異常があるかを知るために、補体成分や制御蛋白の蛋白量や活性測定に検査を進める。
【適応疾患名】 歯周疾患、とりわけ、早期発症型歯周炎(前思春期性歯周炎、若年性歯周炎、重度進行性歯周炎)。
【検査法】 通常用いられるのは、CH50(Mayer法)である。
 ヒツジ赤血球膜(E)に抗体(溶血素、A)を付着させたヒツジ感作血球(EA)は、C1~C9の全補体成分が反応すると古典経路により溶血してヘモグロビンを放出する。EAを一定にして希釈した血清(滲出液)と反応させると、血清(滲出液)中の補体量に応じてEAの溶血程度も変わってくる。補体量と溶血の程度(%)はS字型曲線の関係にあり、50%溶血の付近は直線関係にある。さらに、補体量のわずかな変化であっても溶血程度が微妙に変わるところでもある。これをCH50という。1CH50単位/mlとは、7.5ml反応液中に存在するEA 5×108の50%を溶血させるのに必要な補体の量を意味する。
 なお、上述のMayer法で代表される試験管法のほかに、マイクロプレートを用るマイクロタイター法、EA含有寒天平板法、コイルプラネット法などがある。
 CH50は主に古典経路に反応する補体の量を示しているが、別経路に参加する補体量として、ウサギ赤血球をカルシウムの存在しない状態で検体と反応させて補体価を測定するのはAPCH50である。
【正常値】 ヒトでは30~45単位/mlがCH50の正常値である。EAを溶血させるには補体の全成分が反応する必要があり、CH50は全補体成分の活性である。したがって、1つの成分でも活性が低下していたり、減少していたりすると、CH50は低い値となる。
【結果・評価】 種々の炎症性疾患や悪性腫瘍では、血清補体価は高い値を示すことが多い。しかし、これらの疾患で補体活性や補体蛋白の濃度を測定しても、疾患の診断に役立つことはあまりない。臨床的に有意義なのは、補体価が低下する場合である。CH50が低下を示す疾患は、急性糸球体腎炎、慢性増殖性糸球体腎炎、全身性エリテマトーデス、慢性肝疾患などである。先天的に補体蛋白が欠損あるいは異常低下する疾患もある。
 抗体はFab部分で抗原と、Fc部分で補体と結合し、それによって補体を活性化する。この抗原抗体補体複合体が免疫複合体であり、これが組織に沈着すると、その組織に障害が起こる。血管炎、糸球体腎炎、関節炎、皮膚炎などはその代表的なものである。歯周組織においても同様の反応が起こり、補体は歯周疾患の誘発に強くかかわっている。
 免疫複合体病を診断するためには、血中や滲出液中の免疫複合体の量の増加、組織における免疫グロブリンと補体の証明、血清補体価が低い値を示す必要がある。