無染色標本検査
- 【読み】
- むせんしょくひょうほんけんさ
- 【英語】
- nonstainning test
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【定義】細菌の塗抹標本はグラム染色をはじめ、適当な染色を施すのが通常であるが、一部に染色の不適当な微生物がある。
【意義・目的】スピロヘータのように染色性の悪いもの、生きたままで正しい形態や運動を観察したいとき、細胞内の構造を塗抹標本である程度の観察をしたいときなどにこの方法が用いられる。
顕微鏡は普通の顕微鏡ではコンデンサーを下げてコントラストを強くしたり、暗視野で観察する。無染色標本用の特殊な顕微鏡としては倒立顕微鏡、位相差顕微鏡がある。
【検査法】
1)湿潤標本 : 細菌、真菌、原虫の生きたままの形態や運動性を観察する方法である。スライドグラスに培養菌液を1白金耳おく。平板上のコロニーのときは、スライドグラスに1滴の生食水をおき、菌をこれに浮遊させる。カバーグラスをかけて、周囲をワセリンやパラフィンで封ずる普通顕微鏡で観察する。コンデンサーを下げるか、絞りをしぼって、コントラストを強くする。
真菌の検査ではAmannのラクトフェノール液や10%KOH液が広く用いられている。Amannの液は石炭酸、グリセリン、乳酸に蒸留水を加えたもので、材料をスライドグラスに塗抹し、この液を1滴加えてカバーグラスをかけ、コンデンサーを下げた顕微鏡で観察する。この液にcotton blueを加えると、真菌が淡青色に染色される。10%KOH液は材料の中に混入している角化上皮、毛髪、爪、膿汁などを透明化して、真菌の観察を容易にする。加温すれば透明化がさらに促進される。
梅毒トレポネーマは材料をスライドグラスにとり、薄型のカバーグラスをかけて、周囲をパラフィンで封ずる。暗視野装置または位相差検微鏡で観察する。封鎖を確実にして、翌日鏡検したほうがよい場合もある。封入の際墨汁を加えてもよい。
2)懸滴標本 : 菌液を1白金耳カバーグラスのほうにとる。必要あれば生食水を1滴加える。スライドグラスにはカバーグラスの大きさに合わせてマッチの軸をワセリンやグリースで固定しておき、これに菌液を滴下したカバーグラスを裏返しにかけて固定する。標本に厚みができ、菌は下面に沈下するから、倒立顕微鏡が望ましい。