免疫血液学的検査
- 【読み】
- めんえきけつえきがくてきけんさ
- 【英語】
- immunological test
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【定義】狭義には、各種血球成分に関する免疫学的検査をいい、血液型検査、交差適合試験、抗グロブリン試験、抗赤血球抗体試験、白血球型検査、血小板抗体などの検査があり、広義には、各種細胞性免疫検査も含まれる。
【意義・目的】
1)血液型検査 : 赤血球の血液型にはABO式、MN、Rh、P、Luthern、Kell、Lewis、Duffy、Kidd、Diego、Xg型がある。ABO型以外の型では、型抗原は赤血球上にあるが対応抗体は正常のヒト血清中にはなく、輸血や妊娠分娩などの免疫刺激により産生される免疫抗体である。免疫抗体の中には、溶血作用の強い不完全抗体もあるので注意を要する。Rh抗体は、抗Rh1、(Rho、D)が主であるが、その他に四十数種類発見され、Rh陰性者でもRh陽性血液の輸血により約50%が抗体をつくる。Rh2~Rh5は遺伝学上の検査に、Rh17、Rh19は自己免疫性溶血性患者の温式自己抗体として臨床上意義がある。
2)交差適合試験 : 供血者と受血者の赤血球と血清を交互に反応(主試験+副試験)させ、両者の赤血球の適合性をみる試験で、血液型抗体の内で完全抗体の他に不完全抗体(免疫抗体)による輸血の際の偶発事故を防止するために行うものである。
3)抗グロブリン試験(Coombs試験) : 赤血球の不完全抗体は、抗グロブリン血清(抗ヒトウサギ血清)を加え凝集反応によって、抗Rh非定型的抗体の検出、溶血性貧血、その他の自己抗体の検出に応用される。
4)Donath-handsteiner寒冷溶血反応 : 発作性寒冷色素尿症の血液中に寒冷溶血素があり、寒冷時の赤血球と結合し、加温されると補体存在下に溶血を起こし、血色素尿がでる。
以上、完全、不完全抗体が存在するため、輸血時には、十分注意して検査を進める必要がある。
5)白血球型(HLA型)検査 : 組織適合性遺伝子座抗原(histocompatibility locus antigen)またはhuman leucocyte antigen(HLA)は、白血球、血小板および組織細胞に存在し、第6番目の染色体上の4つの遺伝子座にある遺伝子によって支配され、A、B、C、D、DR座と名付けられている。臨床的には移植免疫や遺伝性疾患の感受性との関連で意義がある。
6)細胞性免疫検査 : 細胞性免疫は、リンパ球特にT細胞を介した免疫反応で、末梢リンパ球の免疫学的分類は、アレルギーや免疫調節機構に異常が生じる先天性・後天性免疫不全症(悪性リンパ腫、リンパ性白血病、悪性腫瘍など)の病態診断や治療経過の判定に有用である。
(1)T細胞B細胞の計測 : T細胞、B細胞の変動は先天性、後天性免疫不全症、リンパ性悪性腫瘍の診断、治療、経過観察に有用性が高い。
(2)リンパ球幼若化検査 : 末梢血リンパ球は、非自己抗原(同種の異型細胞、感作リンパ球対応抗原、非特異的な刺激因子)による刺激に反応して分裂し芽球化するため、生体の感作状態の有無、未知の病因、免疫不全症の診断、放射線治療や免疫抑制治療の効果判定などに有用性が高い。
(3)白血球遊走阻止試験 : 感作リンパ球がふたたび抗原と接触すると、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)が放出され、病変部位にマクロファージを集合させ、遅延型アレルギーに関与する。
【結果・評価】
1)ABO式血液型 : 判定は、正規判定と逆判定を行う必要がある。
2)Rh式血液型検査 : Rh抗体の内抗Rh1(Rho、D)抗体をもつものをRh陽性、もたないものをRh陰性というが、Rh判定検査を行った後に、Rh陰性確認試験およびRh変種検査も行う必要がある。日本人は、Rh陽性99.5%、Rh陰性0.5%、Rh変種0.005%である。
3)交差適合試験 : 不完全抗体を検出できる方法で行う。
4)抗グロブリン試験 : 不完全抗体の存在を確認するためには広汎な抗グロブリン血清を使用し、直接抗グロブリン試験のみでなく間接グロブリン試験も行う。
5)寒冷溶血反応 : 日本人は、寒冷同種抗体が、約1%存在する。
6)白血球型(HLA)検査 : HLAの多形性の相違によってヒトを類別できる。
7)細胞性免疫検査
(1)T、B細胞の変動は、リンパ性悪性腫瘍、先天性、後天性免疫不全症の診断に有用性が高いが、自己免疫疾患、感染症、癌などでは、多様性がみられる。
(2)リンパ球幼若細胞検査の芽球化細胞比の正常値は60~80%で、低値を示す疾患は先天性、後天性免疫不全症、膠原病、進行癌、ウイルス感染症などである。
(3)白血球遊走阻止率は、70%以下を陽性と考えてよい。