専門情報検索 お試し版

免疫電気泳動法

【読み】
めんえきでんきえいどうほう
【英語】
immunoelectropholesis、IEP
【辞典・辞典種類】
歯科臨床検査事典
【詳細】
【定義】 寒天またはアガロース(寒天からアガロペクチンを除去したもの)を支持体として、血清などの検体を電気泳動にて分画、次いで抗血清を拡張させ、平板二重拡散法の原理で沈降反応を起こすことを応用したものである。
【意義・目的】 本法は蛋白成分の定性的分析に最も威力を発揮する方法である。血清を分析した場合、20数種以上の沈降線が得られる。これら沈降線の観察により各種蛋白異常症の診断に役立ち、特に単一性免疫グロブリン血症や蛋白欠乏症の診断に有用である。
【検査法】 支持体電気泳動法とOuchterlony平板免疫拡散法を併用したGrabar-Williamsの免疫電気泳動法について記述する。
1.準備
 1) 支持体として一般的に寒天やセルロースアセテート膜が用いられる。
 2) 緩衝液として一般にベロナール緩衝液とTris塩酸緩衝液が用いられる。ベロナール緩衝液(pH8.6、イオン強度0.05):5.5ジエチルバルビタール酸1.84gと5.5ジエチルバルビタール酸ナトリウム10.3gを蒸留水で1000mlとする。Tris塩酸緩衝液(pH8.6、イオン強度0.05):Tris 23.4gと1N塩酸50mlを蒸留水で1000mlとする。
3)染色液(寒天を支持体とした場合は未染色で観察可能) : (1)蛋白染色にはアミド黒染色、ライトグリーン染色。(2)リポ蛋白染色にはオイル赤染色、ズダン黒染色。(3)ハプトグロビン染色(ペルオキシンダーゼ反応)。(4)セルロプラスミン染色(銅染色)。(5)糖蛋白染色(Mc Manus改良法)。
4)各種抗血清。
5)ガラス板、10×10cm大。
6)泳動箱 : 電極箱と支持体を支える部分とからなる。
2.測定法
1)寒天板の作製 : 水平なガラス板の上に溶解した0.8~1.5%の寒天を厚さ1~2mmになるようにする。次いで、試料用の穴(内径1.5~2mm)と溝(2~3mm幅)を作製する。
2)試料の注入 : 0.001~0.002mlの血清を穴に入れる(同一ガラス板内に正常コントロール血清を置く)。
3)電気泳動寒天板を泳動箱に入れ、両端を濾紙で電極槽と連結する。
4)抗血清の注入 : 抗血清用の溝の中の寒天を取り出し、約0.1mlの抗血清を注入する。次に寒天板を湿潤箱に入れ、室温で約20時間反応させる。
5)水洗 : 反応に関与しなかった余分の蛋白質を洗い流す。
6)染色 : 目的に応じた染色液で染色する。
7)脱色 : 染色方法に合った脱色液で脱色する。
8)乾燥、保存 : 室温で乾燥させる。
3.沈降線の観察
1)沈降線の現われ方 : 沈降反応は抗原と抗体の割合いが最適比のときに、沈降は最も鮮明で、細くシャープにみられる。
2)抗原性の関係 : 沈降線はそれぞれ融合、棘形成あるいは交叉するため、現われ方によって抗原性の関係が推定できる。
3)抗原分子の大きさ : 蛋白質成分の分子量が小さいほど拡散速度が早い。
【結果・評価】免疫電気泳動法により血清蛋白を分析すると20数種の血清蛋白成分の動きを一度に観察できる。
 次の3つの場合威力を発揮する。
1)M‐蛋白血症の鑑別 : M‐蛋白血症(単一クローン性免疫グロブリン異常症)の場合は、セルロースアセテート電気泳動法でM‐蛋白帯が観察されるが、免疫学的な種類を推定することはできない。
2)蛋白欠乏症の診断 : アルブミン分画はほとんどアルブミンからなり、γ‐分画はほとんどIgG免疫グロブリンで占められている。免疫電気泳動法によって、それぞれの血清蛋白成分に対応する沈降線が欠如していることにより、蛋白欠乏症の診断が可能となる。
3)特殊な病的蛋白質成分の検出 : 特異抗血清を用いて比較的微量の病的蛋白質を検出することができる。