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免疫抑制酸性蛋白

【読み】
めんえきよくせいさんせいたんぱく
【英語】
immunosuppressive acidic protein, IAP
【辞典・辞典種類】
歯科臨床検査事典
【詳細】
【定義】1977年、胆癌マウスと胆癌患者の血清中に発見された。人IAPは分子量5.0万、等電点3.0、糖含量31.5%の蛋白で、α1酸性糖蛋白の一亜成分と考えられているが、正常人から得られたものと比して糖鎖構造を異にしている。
【意義・目的】正常人からのもとは抗原性の一部を異にしたα1酸性糖蛋白が癌患者の血清中に増加する。また遅延型アレルギー反応の抑制、液性抗体産生の抑制、抑制マクロファージの誘導促進、腫瘍の生着や増殖を促進する作用を有することが明らかにされている。
【適応疾患名】80%以上の血清IAP異常率を示すものは、胆襄癌、白血病、食道癌、膵癌、卵巣癌、肺癌、腎癌、胆道癌などであり、肝癌、乳癌では30%が低い異常率を示す。癌以外の疾患では慢性関節リウマチと慢性化膿性疾患および急性膵臓炎では80%が異常率を示す。さらに亜急性甲状腺炎では100%が異常高値を示す。また癌の進行に伴って、血清IAPは増加し、進行癌では80%以上の異常率を示す。治療効果の判定においても有用で、死亡例ではすでにIAP値は高く、軽快治癒例では治療後、正常値に低下したままである。一方尿中IAPは胆道癌、膵癌、食道癌、その他、胃癌、大腸癌でも血清IAPの成績とほぼ同様の傾向が認められている。
【結果・評価】IAPは免疫抑制因子の1つであるが、主にマクロファージと肝細胞で産生され、T細胞やB細胞あるいは赤血球では産生されない。また各種の実験結果からIAPの働きはマクロファージやNKを介した阻止作用であることが確かめられている。IAP測定は癌患者における免疫機能の低下を検索するための一次スクリーニングとして有用であり、他の腫瘍マーカーと併用することにより、癌診断の向上と治療経過の適切な把握に価値あるものと思われる。