リン脂質
- 【読み】
- りんししつ
- 【英語】
- phospholipids, PL
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【意義・目的】リン脂質とは単一の化合物を指すのではなく、有機リン酸基をもつ複合脂質の総称である。生体内で多量に存在し、主に膜構造部(神経組織や生殖細胞に多い)や血漿に分布している。構造成分により主に2つに分類される。(1)グリセロリン酸をもつグリセロリン脂質(代表的なものにレシチン、ケファリンがある)。(2)スフィンゴシンをもつスフィンゴリン脂質(代表的なものにスフィンゴミエリンがある)。リン脂質は細胞構造の繊維に必須であるが、親水性と疎水性の両方の性質を有するので、生体内で界面活性剤の役割を果たし、他の脂質の乳化、血液の凝固、酸‐塩基平衡などに広く寄与している。
【検査法】通常総リン脂質として測定する血清総リン脂質の定量に化学的測定法と酵素的測定法に2大別される。
1)化学的測定法 : (1)血清からのリン脂質の分別。(2)リン脂質の湿性灰化による無機リン。(3)無機リンの比色。以上の3段階操作より成っている。この化学的測定法は、リン脂質の分別法の相違により、有機溶媒抽出法とトリクロル酢酸沈澱法に大別される。Hoeflmayerらはトリクロル酢酸沈澱法において、湿性灰化による無機リン化にパラフィン溶加熱法を導入し、無機リン化の最適条件を得て、精度を向上させた(Hoeflmayer法)。
2)酵素的測定法 : 血清中のリン脂質はホスホリパーゼD、コリンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼを組み合わせた酵素比色法で測定する。(1)メタノールクロロホルム(1 : 2V/V)のFolch抽出液などの有機溶媒抽出。(2)過塩素酸化による無機リンへの灰化。(3)生成した無機リンの定量。以上の3段階操作より成っている。
【正常値】総リン脂質はおおよそ136~240mg/dlである。個人の生理的変動幅は46mg/dlと小さい。加齢により軽度の増加傾向がある。食事の影響はほとんど受けない。妊婦では妊娠初期より増加、出産時は平均10mg/dl増となる。
【結果・評価】リン脂質のみ単独で異常値を示すことはまれで、他の脂質と同時に測定されて臨床的診断に用いられる。
1)上昇する疾患 : WHO分類による脂質代謝異常値のIIa、IIb、III、IV型、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、リン脂質/コレステロール比で、健常者は1.0付近であるが、リポ蛋白X(LPX)の出現を伴う閉塞性肝障害ではリン脂質が著しく上昇し、リン脂質/総コレステロール比が1.5以上になる。
2)減少する疾患 : 先天性無β‐および低β‐リポ蛋白血症、甲状腺機能亢進症、劇症肝炎、非代償性肝硬変、肝癌で顕著な低下、貧血、白血病、多発性骨髄腫でも低下がみられる。
3)変動がない疾患 : 急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝。