臨床心理検査
- 【読み】
- りんしょうしんりけんさ
- 【英語】
- clinical psychological testing
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科臨床検査事典
- 【詳細】
- 【意義・目的】臨床心理検査は、個人または集団の性格、能力、心的特性およびその障害を明らかにする目的で作成された心理学的な検査をいう。しばしば心理テストと呼ばれる。これは19世紀後半から統計学的方法による個体差の研究が始まり、20世紀前半には始めて臨床で用いられるようになり、歯科臨床においても種々のテストが用いられている。個人の心的特性をより深く、より個別的に把えることが可能と考えられている。歯科ではロールシャッハテスト、文章完成法などの投影法はほとんど用いられず、Y-G test(矢田部・ギルフォード性格テスト)、MMPI(ミネソタ多面人格検査)、そのほか数多くの質問紙法検査が使われている。
【検査法】心理検査はいくつかの基準に従って分類すると、次のとおりである。
1)検査目的による分類
(1)知能検査。
(2)特殊能力検査 : 職業適正、作業能率、学力など。
(3)人格検査(パーソナリティ・テスト) : 狭義の心理テストはこの領域を指す。
2)被検者の条件による分類
(1)乳・幼児用。
(2)学童用。
(3)成人用。
(4)盲人用など。
3)検査場面の設定による分類
(1)集団法
(2)個人法 : (i)対面法(テスターと被検者との対人交流を伴うもの)、(ii)単独法(被検者単独で作業するもの)。
4)特に人格検査の問題設定について
(1)検査目的が被検者に明瞭にわかり、質問の意図が明確なもの(質問紙法)。
(2)検査目的が、被検者によって不明瞭あるいは偽装されており、検査刺激が曖昧な(構造化されていない)もの(投影法)。
これらのうち、歯科臨床医では1)の(3)を中心として質問紙法によって行えばよいと思う。
質問紙法では、ほとんどの検査用紙は、被検者が一定の質問項目に対して、それぞれの検査で定められた規則に従って解答に記入し、採点法はそれぞれの検査により決められた2段階(はい、いいえ)、3段階(はい、いいえ、どちらでもない)、5段階などの尺度によりチェックする。
投影法では、試験内容により記載法が異なり、採点法にも種々の制約が加わり、その技法を習得するのに一定の時間と、能力を必要とする。
歯科臨床では、一般に投影法は行わず、自己評価法(質問紙法)が用いられている。これは自己評定法では採点法が容易に行われる、などによっている。
【結果・評価】歯科医療は従来、ともすると器質的病変の診断と治療に終始してきた感があるが、医療の対象となる人間は、心身一如の存在であり、それぞれの患者、疾病の発症、経過に重要な意義をもつことが知られるようになっている。
患者の人格、能力、心的特定およびその障害などを追究することが歯科医療を成功させる1つの鍵になるわけであるが、そのためには患者全体像の観察、慎重な問診などを行うと同時に、質問紙法による自己評定法でよいからこれを患者に実行させて万全を期したいものである。