専門情報検索 お試し版

リンパ球Fcレセプター保有細胞検査(歯肉)

【読み】
りんぱきゅうえふしーれせぷたーほゆうさいぼうけんさ(しにく)
【英語】
identification of Fc receptor positive lymphocytes(in gingivae)
【辞典・辞典種類】
歯科臨床検査事典
【詳細】
【定義】リンパ球の細胞膜状には、免疫グロブリンの定常部位(Fc)と特異的に結合するレセプター(Fcレセプター、FcR)が表現されていることが知られている。FcRは免疫グロブリンの各クラス、すなわちIgM、IgG、IgA、IgD、IgEと特異的に対応しており、各々FcμR、FcγR、FcαR、FcδR、FcεRと呼ばれている。これら各FcRはリンパ球機能を特徴づける1つのマーカーとなりうることから、病巣歯肉組織中での各FcRのリンパ球表面上における表現の有無を検索する。
【目的】慢性歯周炎の病巣歯肉中には、著しいリンパ球浸潤が認められる。リンパ球はTリンパ球とBリンパ球に大別されるが、さらにTリンパ球は、機能的亜群(T Helper/Inducer細胞、T Suppressor/Cytotoxic細胞)に細分することができる(リンパ球 Helper、Inducer cell 検査、リンパ球 Suppressor、Cytotoxic cell 検査の各項を参照)。これらはFcRのクラス特異性を利用しても分類することができる。そこで、リンパ球のFcRを検索することで炎症の質、すなわち病型、病期などを推測する。
【検査方法】
 1) 歯肉浸潤リンパ球浮遊液の調整方法は、リンパ球NK細胞検査の項を参照。
 2) 得られたリンパ球をIgM不含血清添加培養液中で37℃、一夜培養する。
 3) 別に調整した、免疫グロブリン結合ウシ赤血球(IgG-ORBC、IgM-ORBC、IgA-ORBCなど)を、細胞浮遊液に添加し37℃、15分間培養し、遠心後(1000回転、5分)さらに、4℃、1時間培養する。
4)静かに再浮遊させ、ロゼットを形成した細胞の比率を光学顕微鏡下で測定する。
【結果・評価】Tリンパ球上のFcRに関しては、FcμR保有細胞群がHelper活性を有し、FcγR保有細胞群がSuppressor/Cytotoxic活性を有することが知られている。Bリンパ球FcRに関しては、FcRの表現がその分化階段を知る手がかりとなる。また、一部のB細胞には、肥満細胞と同じくFcεRを表現する細胞群があり、これがI型過敏症反応の発現に強く関与していることが知られている。その他、NK細胞などによる抗体依存性細胞障害活性の発現にもFcRの関与が必須であることが示されている。このようにFcRは各リンパ球の機能発現に密接に関連することが明らかとなっており、歯肉浸潤リンパ球の機能を知るうえで各クラスのFcRの表現型を検索することは興味深い。しかし近年、免疫学的手法の発達に伴い、リンパ球の機能的亜群あるいは分化階段を、より正確にしかも簡便に識別しうるモノクローナル抗体が開発され、また各FcRをクラス特異的に識別するモノクローナル抗体も開発されたことから、本項で示したFcR本来の性質であるFc結合性を利用した検索法よりも、モノクローナル抗体を用いた検索法が現在では一般的となっている。