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トランジエント・アピカル・ブレイクダウン

【読み】
とらんじえんと・あぴかる・ぶれいくだうん
【英語】
transient apical break down
【書籍】
外傷歯の診断と治療 増補新版
【ページ】
132

キーワード解説

 トランジエント・アピカル・ブレイクダウン(以下TAB)は、1986年にFrances Andreasen 女史によって最初に草案された。直訳すれば「一時的な根尖部の破壊(崩壊)」となる。本来この現象は、主に脱臼性の外傷を被った歯根完成歯において、壊死に陥った歯髄が生活反応を取り戻す際にみられる、一連の炎症と修復現象(治癒)に対して名づけられたものである。この論文で示されたTABという現象は、当時センセーショナルであったと思われる。歯根完成歯でいったん壊死した歯髄が自然の治癒力で再び生活力を取り戻すという劇的な一連のプロセスである。原著では、このような現象が、調査した脱臼性の外傷を被った637本のうち、27本(4.2%)にみられたことが報告されている。この数字は決して多いものではない。したがって、歯根完成歯で、TABを待つことがどれほどの意味があるかわからないかもしれないが、「最高の根管充填剤は歯髄である」といわれているように、できれば安易な抜髄は慎みたい。