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ウィッププンクト中心釘

【読み】
うぃっぷぷんくとちゅうしんてい
【英語】
Wip-punkt pin
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
咬合器の側方運動時の回転中心を設定するための金属製の釘。作業側顆路副指導釘とも呼ばれ、Gysiの初期の咬合器であるウィッププンクト咬合器(1908)や同年に開発されたアダプタブル咬合器に、その典型的な構造をみることができる。ウィッププンクト中心釘は、上顎フレームの関節部の内方に左右各1本ずつ取りつけられ、その先端は顆頭間軸上にあって下顎フレームの指導板におさまっている。作業側の中心釘が回転中心となり、咬合器は側方運動を営む。この運動中に、非作業側顆路と切歯指導部のガイドとを調和させるために、左右の中心釘間の距離は70~130mmの間で調節できるようになっている。
ウィッププンクト中心釘は、側方運動時の回転中心が両側顆頭を結ぶ線上で作業側顆頭のやや内方にある、とするWalker以来の見解を実現するためにつくられた機構である。しかしGysiのシンプレックス咬合器(1914)では、上顎フレームのウィッププンクト中心釘は固定され、その先端は関節部の後下方へ移されている。下顎フレームの指導板にはわずかな彎曲が与えられ、側方運動時に中心釘が滑走するようになっている。そのため側方運動の回転中心は顆頭間軸上から顆頭の後上方に移され、また開閉運動軸も後下方に位置している。シンプレックス咬合器ではWalker以来の側方運動の回転中心に関するウィッププンクト的な考え方は否定され、Gysiの意図がウィッププンクト中心釘そのものから、軸学説的回転中心を表現するための装置へと移行したことが示されている。事実、1914年以降にGysiの開発した咬合器ではウィッププンクト中心釘は名ばかりとなり、軸学説的回転中心を備えるようになっている。