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ウィルソンの湾曲

【読み】
うぃるそんのわんきょく
【英語】
Curve of Wilson
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
前頭面に現われる下顎および上顎の咬合湾曲。側方咬合湾曲mediolateral curveとも呼ばれる。下顎の舌側咬頭は下顎の頬側咬頭より短いため、下顎の咬合湾曲は下方に向かって凸のカーブを描く。スピーの湾曲とともに、下顎の側方運動時に上下顎の歯列を接近させ、咀嚼効果を高めるために役立つ。
GPT-6では、“咬合が球面であるべきだという理論(モンソンの球面説)において、前頭面に投影された左右歯列の咬頭(複数)によってかたちづくられる湾曲。下顎歯列の湾曲は凹面を、上顎歯列の湾曲は凸面を呈する。下顎歯列の湾曲は、左右臼歯が同じ量だけ舌側に傾斜することにより、斜交配列した左右の対応する咬合頂(複数)が同一の円弧上に位置する結果、発現する。上顎歯列の湾曲は、歯軸(複数)が同じ量だけ頬側に傾斜することによって発現する。Wilson(1911)にちなんだ側方咬合湾曲の呼称”と定義されている。
総義歯の調整時にスピーの湾曲とともにウィルソンの湾曲を付与することにより、クリステンゼン現象を防止し総義歯の安定を図ることができる。この考え方は側方運動中に作業側の下顎咬合堤が接触したまま頬側へ水平に移動することを前提とすれば、運動学的になり立つことが数学的に証明されている(高山 1987)。しかし天然歯の場合は前歯被蓋のため側方運動時に作業側の咬頭が外側下方に移動するので上記の前提がなり立たない。したがって天然歯におけるウィルソンの湾曲の必要性は他にあり、ウィルソンの湾曲の計測とともに生体力学的解析が必要である。
⇒咬合湾曲、調節湾曲