猿隙
- 【読み】
- えんげき
- 【英語】
- Diastema
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- ⇒ディアステーマ
上顎と側切歯と犬歯との間、ならびに下顎の犬歯と第1小臼歯との間に現われる歯間隙、霊長類にだけみられる歯列の特徴であるため、霊長空隙(primate space)とも呼ばれる。サルや類人猿では下顎のすべての偏心運動が上下顎犬歯の接触滑走によって誘導されるように、犬歯が他の歯と比べてよく発達し、咬合平面より高位に突出している。そして、上下歯を噛み合わせたときに、上顎の側切歯と犬歯の間に下顎犬歯が噛みこみ、逆に下顎の犬歯と第1小臼歯の間に上顎犬歯が噛みこむため、そこに著明な歯間隙がみられ、これは猿隙と呼ばれる。このような歯間隙は、ヒトの乳歯列弓にもよくみられ、上顎の乳側切歯(B)の遠心と下顎の乳犬歯(C)の遠心に現われ、系統発生学的にも注目されている。また、正常な歯列と咬合面形態を有する高齢者の歯列弓にも、このような空隙を散見できるため、ヒトと類人猿の共通の特徴として犬歯誘導の人類学的根拠のひとつとされている。しかし、今日でもディアステーマのもつ意義は明確にされておらず、実際には発育空隙(developmental space)と区別して、乳歯列弓の閉鎖状態をみる1つの目安に用いられている。