オーバーバイト
- 【読み】
- おーばーばいと
- 【英語】
- Overbite
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 咬頭嵌合位で上顎前歯の切縁と上顎臼歯の頬側咬頭が下顎歯に対して垂直的にかぶさっている関係。GPT-6ではoverbiteは俗称slangであるとして、バーティカル・オーバーラップvertical overlap（垂直被蓋）に呼称変更したうえで、歯が対合歯と重複する部分を垂直に測った距離、とくに上顎切歯切端が下顎切歯切端より下方に伸びている距離、またこの用語は対合咬頭の垂直関係を表すのにも用いられる、と定義されている。正常咬合では前歯部におけるオーバーバイトの値は0～4mmと報告されている。
Pound（1966、70）は上顎前歯の切縁の位置を[f]発音位によって決定し、下顎前歯の切縁の位置を[s]発音位でき、発声によりオーバーバイトをみつけ出す方法を紹介している。
前歯部のオーバーバイトは臼歯部の咬合面形態を決定し、オーバーバイトが深い場合は、偏心運動中に下顎は容易に下方へ押し下げられ、臼歯は離開しやすくなる。そのため臼歯の咬頭は高くつくることができる。逆に、オーバーバイトが浅い場合は、偏心運動中に下顎は水平的に移動するため、臼歯はなかなか離開できない。そのため臼歯の咬頭は低くつくらなければならなくなる。臼歯部のオーバーバイトは咀嚼中の口腔粘膜の咬傷を防ぐのに役立ち、直接咬合には関与しない。
前方運動が咬合に関係するのは、咬頭嵌合位から切端咬合位までである。この間に切歯点が移動する直線的距離は3.6±1.3mm（中野 1976）、または4.1±1.1mm（保母ら 1993）である。これらの値は、正常咬合者において前方運動が咬合に関係する機能的範囲を示しているので、その下限から外れると正常機能に支障をきたすと考えられる。この知見に基づいて、咬頭嵌合位における下顎前歯の切端位置から上顎前歯の切端までの距離の機能的観点からみた下限は約3mmとみつもられる。一方、審美的観点からすると前歯の歯冠長は長めにしたほうが好ましい。したがって、この約3mmの位置は審美と機能の接点にあたる。咬頭嵌合位からこの接点までにおいては機能を重視し、そこから上顎前歯の切端までは審美性を優先させることにより審美と機能を両立させることができる。ちなみに電子的計測による矢状切歯路傾斜度の平均値はカンペル平面を基準として43.0度（中野 1976）、軸鼻翼平面を基準として32.8度（西 1989）、同じく40.8度（小川ら 1992）であり、アキシス平面に換算した3者の平均値は約47度である。これらのデータをもとに上記の機能と審美の接点の咬頭嵌合位からの距離（3mm）をオーバージェットの量に換算すると約2mmとなる。