オルガニック・オクルージョン
- 【読み】
- おるがにっく・おくるーじょん
- 【英語】
- Organic occlusion
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- ナソロジーの技術を駆使してつくり出される、きわめて精巧なミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョン。ナソロジーの初期にStallard(1963)がD’Amicoのカスピッド・ライズと一線を画する主旨で用いた歴史的呼称。その後Thomas(1967)によって改良された。中心位と咬頭嵌合位は一致しポイント・セントリックになっている。このとき臼歯部歯列は1歯対1歯。カスプ・フォッサの関係で嵌合し、前歯は約25μm程度離開する。前方運動がはじまると上顎切歯の口蓋面によって下顎前歯の切端が誘導され、それよりも遠心に植立する歯は離開する。また側方運動がはじまると作業側の上顎犬歯の口蓋面によって、下顎の犬歯の遠心切端と第1小臼歯の頬側咬頭の近心斜面が誘導され、それ以外の歯は離開する。
歯は約5gの感圧能力を有するが、その域値は臼歯より前歯のようが高い(Lowenstein 1955)。河村ら(1967)は、被験者31名の各歯に20gの負荷をかけて、負荷が加わっていると感じる歯を被験者が正しく指示できた率により歯種ごとの感圧能力を調べた。その結果、中切歯から第2大臼歯まで後方(遠心)にいくほど的中率が小さくなり、歯種ごとの感圧能力が低下することがわかった。さらに的中率と歯根表面積の間で相関検定を行ないその結果を分析して、河村らは、歯の感圧能力は、歯根表面積ならびに歯根膜内の感覚受容体の分布と感度の両方に依存すると結論している。河村らの知見は、犬歯誘導やミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョンの咬合様式が、感圧能力の高い前歯にガイド機能をゆだねるという点で、バランスド・オクルージョンに比べ生物学的合目的性に優れていることを示唆している。
咬合様式と筋活動の関係についてSlavicek(1982、84)は、犬歯誘導が筋活動を低下させるのに対し、グループ・ファンクションは筋活動を高めると述べ、犬歯誘導を重視している。各歯種の誘導路長は中切歯、側切歯、犬歯、第小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯および第2大臼歯の順に、それぞれ平均4.0mm、3.6mm、4.5mm、2.5mm、2.6mm、2.7mmおよび2.6mmで、犬歯の誘導路長がすべての歯種のうちでもっとも長い。
オルガニック・オクルージョンは、フルマウス・リコンストラクションで与える咬合のパターンで、咬合調整や少数歯の補綴によって簡単に付与できるような咬合ではない。ちなみにGPT-6ではアンテリア・プロテクテッド・アーティキュレイションと同義語のあつかいとなっている。
⇒ミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョン