外傷
- 【読み】
- がいしょう
- 【英語】
- Trauma
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 外傷とは、生体の一部分に対する損傷をさす。また、個人の抵抗能力を越える急性または慢性の精神的衝撃、およびこれのパーソナリティに対する永続的な為害作用をさす場合もあるとOPG-3で定義されている。
身体的外傷のうち、顎顔面領域の外傷は咀嚼機構に加わる正常な機能圧を越える力とされ、加わる力の強さと期間の2点が重要である。これらは3つに分けられる。
直達外傷direct traumaは、突発的な、多くの場合に単発の衝撃としての外傷である。
介達外傷indirect traumaは、損傷部位に直接には加わらない突発的な衝撃による外傷である。
直達外傷と介達外傷は外因性で外部から体に加わる大きなまたは過度の力である。これに対しマイクロトラウマは内在的である。
直達外傷(マクロトラウマ)には打撲の他、長時間の大開口、抜歯時の関節および靭帯の外傷なども含まれる。介達外傷では、顔面への直接打撲をともなわない過屈曲伸展損傷(いわゆるムチ打ち症)が代表的である。交通事故に関連して顎関節に対して頚部に生じるのと同様な損傷が生じるか否かについては論議がある。
顎関節打撲contusion of temporomandibular jointはマクロトラウマのひとつに分類される顎関節の外傷性の損傷で、急性の滑膜炎、浸出液の貯留が特徴で、出血性関節炎をともなうこともあるが、骨折は生じていないものとOPG-3には定義される。顎関節部の腫脹、圧痛、下顎の運動痛、開口障害、軽度の咬合異常(患側臼歯の無咬合)が生じうる。顎関節の外側から加わる場合のみならず、オトガイ部などに前方から加わる力による場合がある。
マイクロトラウマmicrotraumaはくり返して体に加わる低レベルの潜在的損傷力をさす。通常は器官内で生じるもので、不良な姿勢や歯の噛いしばりなどの慢性的な習癖によるものはその一例であるとOPG-3に定義されている。微小外傷または微細外傷と呼ばれる。類似語に内在性外傷intrinsic traumaがある。OPG-3によれば内在性(内因性)とは、原因のすべてが、器官、組織、あるいは体の部分にあるものとされる。
マイクロトラウマは、姿勢の不均衡imbalance、または口腔習癖や異常機能により、咀嚼系に対し持続的にくり返し加わる不都合な荷重である、と長期にわたって仮説化されているとOPG-3では述べられている。頭部前置姿勢forward head posture、受話器を頭部と肩とではさむことなどが筋と関節の緊張を生じ、これが頭蓋下顎障害患者の頭痛を含む筋骨格痛を引き起こすことが指摘されている。
口腔顔面痛に分野においては、適切な診断と治療にはこれら外傷の病因を理解することが重要である。とくにマイクロトラウマと精神的な外傷が特徴的であるが、後者は心理社会的因子として論じられる。
顎関節にマイクロトラウマを生じる原因には、クレンチング、グラインディング、咬合干渉、弄舌癖などがある。