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下顎窩

【読み】
かがくか
【英語】
Glenoid fossa
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
頬骨弓基部の下面にみられる顎関節の構成要素のひとつ。外耳道のすぐ前方に位置し、下顎骨の顆頭を受け入れる役割りを果たしている。下顎窩は母指頭大の浅い窩で、普通、楕円形をしている。しかし下顎窩の形態や大きさには個人差が多く、またその形態は増齢的に変化するので、一概に述べることはできない。
下顎窩はその後方を鼓室鱗裂に、また前方を関節結節によって境されている。下顎窩後部の凹窩は機能的な役割りをもたず、単に下顎頭を受容する部位にすぎないといわれている。窩底部のもっとも薄い部位では厚さが1mm以下の個体もある。この窩底部の前方約10mmの位置に関節結節がある。下顎窩の窩底部から関節結節に至る下顎窩前壁は下顎運動時の機能面である。この前壁は前下方に向かってなだらかに傾斜するS字状の彎曲をもち、この部分の形態は下顎運動の後方決定要素として重要視されている。下顎窩は、解剖学的には関節結節と区別して考えられている。
下顎窩の内面は繊維性軟骨によって被覆されている。この軟骨は窩底部ではわずかに肥厚した骨膜に変わっている。これは窩底が下顎運動時の機能面でないことによると考えられる。下顎窩前壁は機能面であるために、この部分の線維性軟骨は特徴ある構造をもっている。機能面自体を覆う線維性軟骨は比較的薄く、しかも脈管を含まないが、周囲にいくに従って徐々に厚さを増し、脈管を豊富に含む弾力性組織に移行している。機能面の繊維性軟骨に含まれる線維束は表層では下顎頭の滑走運動と平行に、また深層では顆頭から加わる圧力を吸収するために直角に走行し、構築学的に合理的な構造を有している。前頭面から観察する下顎窩は卵形の下顎頭を受け入れる形態となっていて、咬合器のように平坦でもないし、またハウジングの内側壁に相当する骨もみあたらない。解剖学的には下顎頭が内側、外側に移動する場合にはやや下方に移動する構造となっている。
⇒顎関節、関節結節