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下顎頭

【読み】
かがくとう
【英語】
Condyle
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
⇒顆頭 
下顎骨関節突起の上端の横楕円形に膨大した部分。側頭骨下顎窩と相対して顎関節を構成している。解剖学における用語は下顎頭であるが、歯科医学では顆頭と呼ぶ場合も多い。とくに運動を表す用語および咬合器関係では顆頭が用いられ、解剖学的、病態生理学的な内容では下顎頭が用いられる。顆頭は左右方向に長い楕円形で、日本人では前後径は平均約10mm、その左右径は平均約20mmの大きさをもっている。前後的にみると、上が開いた扇形をしており、中央部がもっとも高い。側方からみると、わずかにふくらんだ小指形をしている。また顆頭を上方からみると、外側が前方に位置しており、このため左右の顆頭の長軸の延長線は180度よりも小さい角度で交わっている。このような独特の顆頭の形態はこれに対応し、ガイドする下顎窩と関節結節の形態とともに機能が形となったいわば下顎運動の象形文字といえる。現在の歯科医学はこれを完全に解明するには至っていない。
顆頭の形態といくつかの運動との関係について述べると、下顎の(蝶番)回転運動においては顆頭の長軸が前傾していることから、回転により内側極から中央部に向かっての部分が下顎窩と近接する。すなわちこれらの部分が下顎骨の後半部の代表として顆頭に加わる圧力を負担する。
また側方運動においては前頭面的には非作業側顆頭は下方に移動する。作業側では回転が起きるが、外側極部が支点となる。非作業側では顆頭は内方にも移動するがこれにより非作業側では中央部から内側極にかけての部分が関節結節と近接しやすい。顆頭の上面は滑沢な軟骨によって覆われている。顆頭の上面から前面にかけての部位は、下顎窩前壁と相対して実際に機能運動を営む部位であるため、その表面は、線維性軟骨によって覆われている。とくに、前内側面では線維性軟骨が厚く、外側にいくに従って徐々に厚みを減少している。顆頭後面の関節面の下方には関節包と関節円板の後部が付着している、耳介側頭神経はこの下方を走行していることが多い。顆頭前面の関節面の下方にも、また三角形の著明な凹窩がある。この部位は翼突筋窩と呼ばれ、そこに外側翼突筋の下頭が停止している。顆頭への栄養は関節突起の内部を経るものではなく、前方の翼突筋窩の部分からが主であるとされる。顆頭の内側端付近は内側極medial pole、外側付近は外側極lateral poleと呼ばれる。関節円板の病変は外側極付近に多くみられる(Hansson 1977)。また、円板転位も外側極にはじまることが多い(Hansson 1973)。
⇒下顎窩、顎関節