顎関節症
- 【読み】
- がくかんせつしょう
- 【英語】
- Arthrosis of the temporomandibular joint
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 顎関節症は日本における造語で、TMD(CMD)とは範囲が異なっている。日本顎関節学会では顎関節症の疾病概念を、顎関節症とは顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節(雑)音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする慢性疾患群の総括的診断名であり、その病態には咀嚼筋障害、関節包、靭帯障害、関節円板障害、変形性関節症などが含まれていると定義(1997)している。
さまざまな症状が合併して起こることが多いので本症は症候群としての性格をもっている(上野 1976)。一般的に本症は女性に多く男性に少ないといわれ、好発年齢は20~30歳代である。顎関節症の原因は複雑で、諸説が発表されているが、定説をみない。
顎関節症はいろいろと論議の多い疾患である。最近の20年間に学問上、臨床上での大きな進展があったため、いまだに大きな変化を遂げつつある分野である。近年では顎関節症は筋骨格系の疾患のひとつに分類されるものと認識されている。歯科医学においては、人体の最硬器官である歯とその集合体である上下歯列の接触関係(咬合)の為害作用と病因としての意義に注目が集まってきた経緯がある。咬合は医療関係者のなかでは歯科医師のみが教育を受けるもので、教育のなかではその特殊性が強調されてきた。しかし最近の10年間では咬合の特殊性よりも、まず整形外科的原則の習得が強調されはじめている。
顎関節症の発症原理には定説はないが、局所の抵抗性と原因因子のバランス(山下 1993)および全身状態の3つの関係(波多野 1994)に集約して説明できる。発症は局所の為害作用が抵抗性を上回った場合、全身状態が悪化した場合に生じる。したがって、治療の主眼は局所では抵抗性を増加させること、為害作用を減少させること、全身の状態を整えることの3点となる。スプリント治療の効果発現も、主として局所の為害作用を減少させ、組織の損傷を治癒に導き、結果として組織の抵抗性を増加させることと説明できる。
⇒日本顎関節学会の分類、アメリカ口腔顔面痛学会による疾病分類