顎口腔系
- 【読み】
- がくこうくうけい
- 【英語】
- Stomatognathic system
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 咀嚼、嚥下、呼吸、発音および顔貌などの顔面、顎、口腔領域で行なわれるすべての機能に関係する諸組織、器官の機能的単位の総称。GPT-6では、食物の取りこみ、咀嚼、嚥下、発音の他各種の非機能的活動に関与する組織複合体と定義されている。近年、顎口腔系の営む非生理的な機能である異常機能が顎関節症に関係するとして注目されている。顎口腔系には、上顎骨、下顎骨、舌骨、顎関節とそれぞれに付着する筋および靭帯、口唇、頬、歯、口蓋、舌の筋と粘膜およびこれらの組織に分布する神経、血管、リンパ管および唾液腺などが含まれる。顎口腔系は機能的な単位である(河村 1972)。従来、歯科医学は、歯や口腔だけを対象として考えられがちであった。しかし、顎口腔系を構成する1つの要素が障害を受けたために顎口腔系全体に障害が及ぶこともあるから、1つの機能回復を考える場合にも、顎口腔系との関連に注意をはらって治療がなされなければならない。顎口腔系との調和を主目的とした補綴処置を、オーラル・リハビリテイションと呼んでいる。また、医学分野においては頭部の専門分科は耳鼻咽喉科、眼科、脳外科、神経内科など臓器別に名称が付されている。このなかで歯科医の領域は顎口腔系であるが、そのうちの一部の臓器にすぎない歯に基づいて歯科医師と呼ばれている。この意味からは将来は顎口腔科医、顎科医とでも呼ばれるべきであろう。
なお、ヨーロッパで使用される用語にstomatology口腔科学があるが、口腔がoral cavityを意味するにすぎない点に大きな問題がある。
⇒オーラル・リハビリテイション、神経筋機構