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顎二腹筋

【読み】
がくにふくきん
【英語】
Digastric muscle
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
舌骨上筋のひとつで、側頭骨と舌骨と下顎骨を連結する。前腹と後腹の二腹からなる。後腹は側頭骨の乳突切痕から起始し、前下内方へ走行して、舌骨小角の付近で線維性の滑車で舌骨体に支持されている中間腱に移行する。前腹は中間腱から起始し、前上方へ走行して下顎骨内面の正中部にある顎二腹筋窩に停止する。前腹の支配神経は下顎神経の顎舌骨神経で、後腹の支配神経は顔面神経の顎二腹筋枝である。ひとつの筋でこのように支配神経が異なるのは、発生学的に両者が異なった鰓弓に由来することに原因している。顎二腹筋は前腹と後腹とでその作用が異なる。後腹は側頭骨を固定源として舌骨を後上方へ引き、また前腹が機能するときは舌骨を固定するように作用する。一方、前腹は舌骨が固定されているときは下顎骨を引き下げ、また下顎骨が固定されているときは舌骨を引きあげるように作用し、下顎の開口運動に直接関与する。この意味で顎二腹筋を下顎の下制筋に分類することもある。なお系統発生学的な研究から顎二腹筋の前腹と後腹には、ともに筋紡錘が存在しないことが明らかになってきており、この筋の感覚情報と運動の制御機構との関係が研究されている。また、田中ら(1995)により頭位との関係も指摘されている。
頭蓋下顎障害の圧痛検査において後腹部は耳下部を中指または第2指の指腹で圧することにより間接的に検査をすることができる。この顎二腹筋後腹部の顎関節症における圧痛の出現率は50例について調べた吉浦ら(1992)の研究では術前82%、術後34%となっている。また、正常者25名について調べた石崎ら(1992)の報告では32%である。
前腹部は口腔底部を双互診することにより検査することができる。他の口腔内の検査部位同様に、圧痛は正常者において認められることが多い。正常者25名について調べた石崎ら(1992)の報告では88%と、全部位中外側翼突筋について第2位であった。また吉浦ら(1992)は患者50名において術前94%、術後は74%で、外側翼突筋部、内側翼突筋部についで第3位であったと報告している。前腹部の圧痛は舌後方部の圧痛と相関のあることが三井ら(1993)により報告されている。
⇒舌骨上筋群