下頭(外側翼突筋の)
- 【読み】
- かとう(がいそくよくとつきんの)
- 【英語】
- Lower head of lateral pterygoid muscle
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- ⇒外側翼突筋
咀嚼筋のひとつ。上頭と下頭とからなっている。上頭は蝶形骨大翼の側頭下面および側頭下稜から起こり、下頭は蝶形骨翼状突起の外側板の外面から起こる。上頭と下頭はその起始部においてすでに2頭に分かれ、その間のわずかな筋隙には頬神経が走行している。上頭は関節結節の下方を水平的に走行して、その一部は顎関節の関節円板および関節包の前方につく。下頭は後上方でわずかに外方へ傾斜して走行し、上頭とともに下顎頚前面の翼突筋窩につく、下頭は上頭よりも強大である。米国のテキスト内にはOPG-3などのように両頭を別の筋として記述しているものがある。外側翼突筋の支配神経は、下顎神経(三叉神経第3枝)の外側翼突筋枝である。外側翼突筋の下頭は下顎頭を前方に引く働きをし、この間上頭は関節円板を前方へ引く働きをする。両側の外側翼突筋が作用すると、下顎は前方へ移動する。この移動が水平的に行なわれれば前方運動となり、これに垂直的要素が加われば開口運動となる。片側の外側翼突筋が作用した場合はオトガイ部をその反対側へ移動させ側方運動が行なわれる。外側翼突筋は他の咀嚼筋と同様に圧痛検査の部位としてよく知られる。しかし、正常者25名について圧痛を調べた石崎ら(1992)は圧痛の出現率は左右とも100%であったと報告している。また、顎関節症患者においても外側翼突筋の圧痛は高く、治療後には圧痛レベルが低下することが知られているが、50名の患者の術前・術後について調べた吉浦ら(1992)の報告では圧痛の出現率はともに100%であったという。問題は術前の診査において圧痛の有無およびそのレベルから正常か否かを判定することは困難である点である。また、とくに外側翼突筋については解剖学的研究から、臨床的に行なわれている方法では、実際には内側翼突筋を介して外側翼突筋を押すにすぎないという指摘がある(藍 1981)。これらの点から、外側翼突筋の圧痛検査は、同一の術者により初診以降の経過を観察する際に有効性があるといえよう。
⇒咀嚼筋