筋紡錘
- 【読み】
- きんぼうすい
- 【英語】
- Muscle spindle
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- ⇒固有受容体
感覚受容体(器)のひとつで、自己受容体とも呼ばれる。骨格筋、腱、迷路などのなかに存在し、体の位置や運動に関する感覚を受け入れる神経終末で中枢に運動情報を送る役割りをもつ。筋紡錘(Muscle spindle)や腱受容体(Tendon organ)がその代表としてあげられる。筋紡錘は筋線維の間に、その走行と並行して存在し、筋にかかる張力が増加して筋線維が伸張されると、その機能的刺激を受容して活動する。筋紡錘はすべての骨格筋にみられるが、筋の種類によってその数は異なる。抗重力筋または下顎挙上筋(閉口筋)である咬筋、側頭筋、内側翼突筋には筋紡錘が豊富に分布するが、下顎を重力方向に下制する下顎下制筋である顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、顎二腹筋前腹には前者ほど多くは存在せず、また、顎二腹筋後腹にはきわめてわずかしか存在しないとされている。
腱受容体は筋線維が腱に移行する部位に存在する。この受容体の活動は筋にかかる張力に対応して変化し、その張力が外部からの刺激によるものであっても、あるいは筋自体の収縮による張力であっても、その区別なしに反応する。
これらの固有受容体の興奮は求心性神経を経て小脳旧皮質に伝えられ、ここからは遠心性線維が出て脊髄前角のγ‐細胞を支配する。γ‐細胞は筋紡錘を制御するので、これが間接的にはその筋の緊張性を制御することになり、無意識的な姿勢の制御ができる。また、情報の一部は視床下部‐大脳皮質に投射され意識的な制御も行なわれる。一方、筋紡錘からの情報は脊髄で運動神経細胞と単シナプス的に簡単な神経路を経て、刺激を筋などの効果器(effector)に伝達する。これによって、われわれは無意識的に、あるいは意識的に体の位置や運動を調節、保持できる。またとくにこのような単シナプス反射経路によって起こる抗重力筋に対する伸張反射(myotatic reflex)は重要で、同じ筋の腱受容体による抑制と組み合わされて、脊髄や延髄レベルの下位中枢がもっている別な調節機序として認められている。このことは下顎張反射(jaw-jerk reflex)にもあてはまり、咬筋や側頭筋などの下顎挙上筋を急激に伸張(たとえば、顆頭を急に引き下げる)したときにみられる。
固有受容体は、下顎の位置や運動の保持、調節にもっとも関係が深い受容体である。咀嚼筋、その筋膜と腱、関節包には、それぞれ筋紡錘、腱受容体をはじめ、ゴルジ・マッツォーニ小体、ファーテル・パチーニ小体などの固有受容体が存在する。開口運動により筋が伸展されると、この刺激は固有受容体で感知され求心性神経路を上行し、三叉神経中脳路核を経て、三叉神経運動核に伝えられ、それ以上、下顎が開口しないよう開口筋には抑制的な、閉口筋には促進的な制御が加わる。一方、閉口運動により咀嚼筋(開口筋)の筋紡錘が収縮すると、この刺激は同じく運動核に伝えられ、これ以上顎が閉口しないよう、閉口筋には抑制的に、開口筋には促進的に作用する。
また、顎関節の関節包に加えられた刺激は、三叉神経節を経て、三叉神経の主知覚核や脊髄路核に伝えられ、さらに運動核に達し、相反的に下顎の位置や運動が調節されるよう、各開口筋や閉口筋の緊張を増減する。
⇒受容体