原始人の咬合
- 【読み】
- げんしじんのこうごう
- 【英語】
- Occlusion of primitive man
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 原人、旧人、新人、現代人の直接の祖先などを含む原始人の咬合。極端な咬耗と切端咬合をもつことで知られ、現代人の咬合と対比される。わが国に生息した原始人にも同じような咬合の特徴がみられ、約1万年前の縄文時代のヒトと約2000年前の弥生時代のヒトは、いずれも極端な咬耗と切端咬合をもっていた。現代人は原始人とは逆に前歯に被蓋を有するのが常で、極端な咬耗や切端咬合はほとんどみられない。こうした違いは、生活様式の変化に関係していると考えられている。すなわち、原始人は歯の咬耗を引き起こしやすい、自然のままの、硬くて粗な食物を無理して咬断したため、咬頭をすりへらしたと考えられ、また原始人が歯を生活の道具として使っていたことも、磨耗を促進させる大きな要因になっている。日本では鎌倉時代以後、切端咬合のヒトが1割にも満たなくなり、現代人と同じように前歯に被蓋を有するヒトが8割を占めるようになった(鈴木 1975)。これは鎌倉時代に鉄器文化が定着し、歯よりも有効な道具をもつようになったこと、食物の調理がよく施されるようになり、砂など歯の磨耗を引き起こす物質が食物に混入しなくなったことなどが原因と思われる。
⇒咬合の進化