咬筋
- 【読み】
- こうきん
- 【英語】
- Masseter muscle
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 咀嚼筋のひとつ。浅部と深部とからなる。浅部は頬骨弓の下縁から起こり、わずかに後方に向かいながら下方に走行し、下顎骨の外側面の咬筋粗面下部とその下方の下顎角部についている。この筋の頬骨弓の前部から起こる筋層は、ほとんど腱でできている。深部は頬骨弓の下縁の全長にわたる部分から起こるが、深部はさらに頬骨弓の浅い部分と深い部分とから起こる2つの筋腹に分けることができる。頬骨弓の浅い部分から起こる筋腹は、筋突起と下顎底の間の咬筋粗面の上部についている。頬骨弓の深い部分から起こる筋腹は、筋突起の外面についている。深部はいずれもほとんど垂直方向に下行している。咬筋後部の筋層は関節円板の前外方部に付着することがある。咬筋浅部と深部とは前方では連続し、また後方では、後方に開く1つあるいは2つの筋隙をつくることがある。そして、この筋隙は神経、血管の筋組織への通路となっている。咬筋の支配神経は下顎神経(三叉神経第3枝)の咬筋枝によって行なわれる。この神経は下顎切痕を越えて咬筋に入っている。浅部は下顎を挙上してわずかに前方へ引く働きをする。また、深部は下顎をわずかに後退させる働きをもっている。咬筋は同側の内側翼突筋とともに作用して、主として下顎の垂直的な位置の調節を行なっている。
頭蓋下顎障害患者において咬筋の圧痛は、浅部で2または3部位を調べるのが通例である。吉浦ら(1992)によれば、術前では圧痛の出現率は浅部起始部で49%、浅部筋腹部で39%、浅部停止部28%、深部67%、術後には1%、2%、1%、10%であった。これらを統計学的に分類すると、術前では深部、浅部起始部、浅部筋腹部、浅部停止部の順に圧痛が大きく、術後には深部が浅部より高く、浅部間での差は認められなかった。三井ら(1993)によれば咬筋各部における術前の圧痛は咬筋内の他部位はもちろん、他に同側と反対側、側頭筋前部、頭頂部などとも相関が認められた。
⇒咀嚼筋