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咬交

【読み】
こうこう
【英語】
Articulation
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
下顎が偏心運動を行なうときに、相対する上下顎の歯が、その咬合局面で接触しながら滑走すること。総義歯におけるバランスド・オクルージョンの考え方から派生して誕生した用語。1850年代以降、約一世紀にわたりヒトの歯は、機能時に絶えず相対する歯と接触滑走するのが理想とされてきた。しかし1960年以降、少なくとも有歯顎では咬交の概念は否定され、偏心運動中に前歯によって下顎が誘導され、臼歯が離開するのが理想の姿であると考えられるようになり、すべての歯が咬合局面で接触滑走するような咬合様式は、有歯顎には有害と考えられるようになった。咬交の概念は、総義歯補綴にはまだ生かされているが、有歯顎においてはほとんど無意味なものになり、むしろ混乱を避けるために、咬合という言葉で代用されている。
Bonwill(1858)は、occlusionの代わりにarticulationという用語を強く推奨し、その理由を下顎の機能や運動を念頭におくためとし、もし開閉運動のように上下するだけの2次元運動が対象ならocclusionでよいといっている。わが国ではすでに咬合という用語が定着し、下顎運動をはじめとする機能を含めて用いられているので、Bonwillの指摘を当然と受けとめたうえで、混乱を避ける観点から咬合という用語の使用をつづけるべきであろう。
咬交という用語がわが国では使用されなくなったのと相対するように、米国では咬交の原語のarticulationが、咬合の原語のocclusionに代わって復活する傾向にあり、GPT-5から従来ミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョンmutually protected occlusionと呼ばれてきたものが、ミューチュアリー・プロテクテッド・アーティキュレイションmutually protected articulationのように呼称が変更され、臼歯が離開する咬合様式にまで適用されている。またarticulationという語は咬合器articulatorの語源ともなっているが、米国では解剖的咬合器またはこれに準ずるもののみがarticulatorと呼ばれている。他方、機能的に必要な運動だけを再現しようとする非解剖的咬合器の大半は(cast)relatorまたはoccluderと呼ばれているが、日本語訳ではいずれも咬合器となっており、混乱しやすいので留意の要がある。