専門情報検索 お試し版

咬合位

【読み】
こうごうい
【英語】
Occlusal position
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
上下顎歯の接触状態により表現される下顎位で、咬頭嵌合位、後退咬合接触位、習慣性咬合位などがある。咬頭嵌合位は、上下顎の相対する咬頭と斜面が最大面積で接触し、咬頭が密接に嵌合し安定した咬合位をいう。GPT-6では、上下顎の対合歯が完全に嵌合した状態をいい、顆頭位とは独立の定義である、とするとともに、従来intercuspal position、intercuspal occlusionなどとしてきた呼称をすべてmaximum intercuspationに統一している。この用語は直訳すると最大咬頭嵌合となるが、和訳では混乱を避けるため、従来一般に親しまれてきた咬頭嵌合位を用いる。この他、中心咬合位centric occlusionという用語がある。定義があいまいで咬頭嵌合位と混用されることが多かったが、GPT-6で、下顎が中心位にあるときの咬合位で咬頭嵌合位とは独立のものと定義された。GPT-6では中心位と咬頭嵌合位が一致している下顎位を示す用語はみあたらない。
咬頭嵌合位は健全歯列者ではよく安定しており、再現性に富んでいる。しかし上下顎歯の接触によって決定されるため、不正咬合による位置異常、咬耗、動揺、欠損などさまざまな条件によって左右される。咬頭嵌合位の病的・器質的な変化は、顆頭の偏位や咀嚼の終末位の垂直的・水平的ずれを生じる可能性を秘めている。
咬頭嵌合位における上下顎歯の接触点数についてPlasmansら(1988)は、一般の教科書に記載されているよりはるかに少ないと述べている。Korioth(1990)は、咬頭嵌合位における接触点数は左右両側において平均7点にすぎず、接触点の分布は第1大臼歯と第2大臼歯に偏り、犬歯に所在することは稀であったと述べている。安田ら(1993)が厚さ0.1mmのリーフ・ゲージを用い咬頭嵌合位における咬合面間距離を計測したところ、その平均値は第1大臼歯がもっとも大きく平均0.08mm(80μm)で、第2大臼歯と小臼歯部はそれぞれ平均0.04mm(40μm)であった。一方金山ら(1994)はリーフ・ゲージの代わりに厚さ12.5μmのレジストレーション・ストリップスを用いて同様の計測を行ない、咬頭嵌合位における咬合面間距離は小臼歯部と第1大臼歯部において平均0.12~0.13mm(120~130μm)で、第2大臼歯部は0.05mm(50μm)であったと報告している。上述のように、咬頭嵌合位における歯列上の接触点数は通念より少なく、咬合面間距離は平均50~100μmで、平均すると上下顎臼歯咬頭間にヒトの髪の毛1~2本分の隙間が存在することになる。
後退咬合接触位は下顎が最後退位にあるときの咬合位をいう。この咬合位における歯の接触は、主として第2大臼歯と第1小臼歯に現われ、早期接触と呼ばれる。これは咬頭嵌合位のずれを生ずる原因となるため、咀嚼筋や顎関節の障害と密接な関係をもっている。
習慣性咬合位は、下顎の習慣性閉口運動の終末位で、咬頭嵌合位と同義に使われる。Glickman(1969)により使われた用語である。Glickmanはテレメータを使った実験で、咀嚼運動の終末が、この嵌合位に帰着することを確認している。