咬合器の選択基準
- 【読み】
- こうごうきのせんたくきじゅん
- 【英語】
- Selection standards of articulator
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 臨床に用いる咬合器を選択する基準。従来は顆路の再現精度をそのまま咬合器の再現精度と結びつけて考えたため、全調節性、半調節性、非調節性の順に精度が高いとされてきた。これは後方決定要素による選択基準であり、前方決定要素を含めた3次元的再現性とは異なるものである。ここでは、咬合器の各再現機構ごとにその必要十分条件を分析し、咬合器の新しい選択基準を示す。
【セントリックラッチ】
咬合器上で診断や技工作業を行なう場合、セントリックが基本となることは説明を要しない。ヒトは上下顎歯の間に髪の毛が1本はさまっただけでも、それを感知する能力をもっている。髪の毛の直径は平均約30μmといわれるので、顎口腔系の受容体はそれだけの検知能力を有していることになる。そのためわれわれは、ごくわずかの早期接触や咬頭干渉を検知できる。金山ら(1994)がレジストレーション・ストリップスを用いて臼歯離開量を計測した際に、咬頭嵌合位における上下顎咬合面間距離を測定した結果、小臼歯、第1大臼歯、および第2大臼歯のそれぞれにおいて平均0.12mm、0.12mm、0.05mmであった。この結果をみると小臼歯や第1大臼歯における隙間がやや大きい傾向があるものの、第2大臼歯ではセントリック・ストップ以外の部位においても平均50μmの隙間しか開いていないことになり、上記の通念がほぼ裏づけられた。このことは咬合器のセントリック保持精度がこのレベル以上でなければならないことを示唆している。
咬合器の操作中に、頻繁に上顎フレームを取りつけたり外したりするが、その際にセントリックがずれないことが重要である。そのため堅牢なセントリックラッチは不可欠である。セントリックラッチには上顎フレームを何回着脱してももとの位置にもどる信頼性が求められ、その精度は上述の理由により30μm以下が望ましい。さらに、十分な弾力をもったセントリックラッチと咬合器の関節部の後壁、上壁および側内壁により顆頭球を支持する4点支持力がすべて顆頭球の中心を通るような設計上の配慮が必要になる。
セントリックラッチだけの問題ではないが、日常臨床において咬合器に歯列模型をマウントしたのち、マウンティング・リングを外し模型を別の咬合器に取りつけ直すと、切歯指導板上に接触する切歯指導桿先端の位置が明らかに異なることが多い。特定の歯列模型について常に同じ咬合器を使用することができない場合もあるので、このことは歯科の咬合器についても一般工業製品並みの品質管理が要求されることを示す事例といえるであろう。Ungerら(1991)は、ゲージブロックで校正したデンタータスARL咬合器の互換性を調べたが好ましい結果は得られなかったと述べている。以上から咬合器は信頼度の高い堅牢なセントリックラッチを備えていなければならないといえる。
【顆路指導機構】
咬合器の顆路指導機構については先人たちが心血を注いで工夫を積み重ねてきたので、顆路指導機構自体に新規な工夫を必要とする点はみあたらない。しかし最近の知見に基づいて見直しを行なうと、おのずから従来の通念とは異なるいくつかの選択基準に到達する。以下それらについて作業側顆路指導機構、矢状顆路指導機構、水平側方顆路指導機構の順に述べる。
従来、全調節性咬合器はその精度が高いため、もっとも為害作用の少ない補綴物を製作できると考えられてきた。この論法に従えば、半調節性咬合器でつくられた補綴物は中程度の為害作用をもち、非調節性咬合器を使用した場合は、補綴物の為害作用は最大になる。バランスド・オクルージョンのように偏心運動中にすべての歯を接触させる場合は、咬合器の精度を向上させて下顎運動と咬合器の動きを正確に一致させる必要があり、もし咬合器が正しく運動を再現しない場合は、その咬合器を使って製作された補綴物は、口腔内で正しいバランスド・オクルージョンにはならず、上下顎の臼歯は偏心運動中にあたりすぎるか、またはほとんど接触しないか、いずれかのエラーを犯すことになる。バランスド・オクルージョンでは、上記のいずれの事態が生じても補綴は失敗する。そのため咬合器の精度が重視されてきた。
ミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョンでは、偏心運動中に臼歯を離開するから、上下顎の臼歯があたりすぎるときだけが失敗となり、離れすぎるときは失敗にならない。そこで咬合器の顆路を調節するときに、補綴物があたりすぎないように注意すればよいわけで、この場合の咬合器の再現精度は、バランスド・オクルージョンを与える場合のように完璧を期さなくてもよいことになる。ミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョンでは、咬合器の精度と為害作用とは必ずしも一致しないから、半調節性咬合器でも為害作用の少ない補綴物をつくり得ることになる。
以上の考え方は咬合器の調節性に関する最近までの一般的な考え方で、このような主旨から一般に半調節性咬合器が多用されてきた。この主旨に関しては、新しい咬合学の観点からいうと、以下に述べるように若干修正しなければならなくなっている。
1)作業側顆路指導機構に対する考察
機械式パントグラフは左右の顆頭部の外側にある各2枚、切歯点部の左右にある2枚、計6枚の描記板に下顎運動を描記させる装置である。描記板ごとに2次元の表示ができるので表示する総次元数は12となり、下顎運動の自由度数6に比し2倍の冗長度をもっている。そのために優れた表示能力を有し、非作業側顆路はもちろん作業側顆路や切歯路近傍の下顎運動の立体像を視覚的にとらえることができる。また全調節性咬合器は機械式パントグラフを装着し、その描記板上に記録されたトレースを描記針が正確になぞるようになるまで、咬合器の各部調節機構を調節して患者ごとの下顎運動を再現するためのもので、その全方位性調節機能は抜群であった。したがって、もし生体の下顎運動が機械のようにいささかのぶれも示さず、かつその運動を厳密に再現することが至上命令だという前提に立つならば、最新のCAD/CAM技術をもってしても、現状では総合的な費用対効果の観点からみて、機械式パントグラフと全調節性咬合器の総合機能に代わるものを開発するのは至難のことと思われる。
しかし、生体の下顎運動は機械のような運動ではない。顆路には作業側と非作業側とを問わずぶれがあり、往路と帰路の顆路が大幅に相違する。最近の知見では、平均作業側顆路がトランスバース・ホリゾンタルアキシス上を真横に向かい、矢状面内偏位を行なわないことがわかった(保母 1982、Hobo 1983、84、84)。この事実は、健康な顎関節にとって、このような方向に作業側顆頭が移動するのがもっとも自然であることを示唆している。また側方切歯路が、作業側顆路がトランスバース・ホリゾンタルアキシス上を真横に向かうと想定した場合の仮想路(ニュートラル・ライン)から外れると、作業側顆路に矢状面内偏位を生じ、そのときの作業側顆路の偏位方向は側方切歯路のニュートラル・ラインからの偏位方向と強い相関性をもっている(Hobo、Takayama 1989)。これは顆頭が軟組織によって支持されているため顆路に多少のぶれがあり、そのぶれが前歯誘導で代表される歯による誘導の影響を受けることを示している。さらにニュートラル・ラインに沿ったレジン製ガイドテーブルを口腔内に装着して作業側顆路を制御した結果では、作業側顆路の矢状面内偏位が4分の1に減少した(保母、高山 1997)。
以上のような事実から、臨床に際し、従来ナソロジーでいわれてきたように作業側顆路の矢状面内偏位を実測値に合わせる必要はなく、むしろ作業側顆路がトランスバース・ホリゾンタルアキシス上を真横に向かうように切歯路を形成するのが生理的であるという見解が得られる。この見解が正しいとすると、(従来の定説と相違するが)全調節性咬合器ではなく、作業側顆路がトランスバース・ホリゾンタルアキシス上を真横に向かうような半調節性咬合器を“正しく”使うことにより、作業側顆路と調和する生理的な前歯部の補綴が可能になる。そこでこれからの臨床では、全調節性咬合器ではなく、半調節性咬合器を選択すべきである、と結論される。
ちなみに作業側顆路がトランスバース・ホリゾンタルアキシス上を真横に向かうという点だけならば、非調節性咬合器も上記の範疇に入るが、咬合器の新選択基準という観点からは非調節性咬合器では不十分なので、混乱を避けるため半調節性咬合器に限定した。したがって、咬合器は作業側顆路がトランスバース・ホリゾンタルアキシス上を真横に向かう半調節性咬合器を使用すべきで、全調節性咬合器の必要はないということができる。
2)矢状顆路指導機構に対する考察
従来、前方運動と側方運動の非作業側における矢状顆路傾斜度の差はフィッシャー角(平均5度)と呼ばれてきた。全調節性咬合器では両者の個別調節が可能だが、半調節性咬合器ではいずれか片方だけにしか合わせられない。複数の電子的計測結果を比較した最近の検討によりフィッシャー角の平均値はほぼ0度であるという結果が得られ(保母ら 1995)、これからすると平均的には前方運動と側方運動とで矢状顆路傾斜度を区別する必要がなくなった。ただし個体ごとの計測結果においてはフィッシャー角はプラスかマイナスかの値を示すことが多く、その点でまだ不分明な部分を残しているが、フィッシャー角は顆路の往路と帰路の差より小さく、かつ顆路の咬頭路への影響度が切歯路に比べてはるかに小さい、という2つの理由から咬合器の矢状顆路傾斜度に前方運動と側方運動の差を付与する必要はないと結論できる。
また矢状顆路は下に向かって凸のS字状の彎曲をもつとされ、Aull(1965)によると矢状前方顆路が直線を示したのはわずか8%で、残りは彎曲形状を示し、その円弧の直径の最小値は約10mm(34%)であった。従来全調節性咬合器ではこの顆路の彎曲を再現するのが理想とされ、プラスチック製の上壁をパントグラフ・トレーシングに合わせるために、何種類かの型を用意してさし変えるなどの努力をはらってきた。最近の電子的研究においても顆路が下に向かって凸の彎曲形状を示すという知見については変わりはないが、このような彎曲形状が顕著に現われるのは5~10mmの長さのトレーシングを描かせたときで、上下顎歯の咬頭頂が対向関係にあるセントリックから2~3mmの範囲ではほとんど直線的形状になる。このことは彎曲形状の円弧の直径が10mm(最小値)、弧長が3mmのとき、円弧状トレーシングとその直線近似との間に生じる誤差が±5度にすぎないことによっても裏づけられている。したがって、咬合器の矢状顆路は直線的で十分であり、彎曲形状の必要はない。
従来ナソロジーでは咬合器の矢状顆路をトレーシング・ラインに正確に一致するように調節するのが金科玉条とされてきた。新知見による臨床術式(ツインステージ法)が提案されているが、顆路は患者の実測値だけでなく、診断目的や技工の作業工程によりいくつかの段階に調節値を変更しながら使用するので、矢状顆路傾斜度の調節機能の必要性には何ら変わりはない。したがって、咬合器は顆路を直線的に再現し、かつ矢状傾斜度調節機能をもつ半調節性咬合器を使用すべきである。
3)水平側方顆路(非作業側)指導機構に対する考察
水平側方顆路において、その内側前方へ向かう彎曲路の始端(セントリック)と終端を結ぶ直線が矢状面となす角は水平側方顆路角(ベネット角)と呼ばれ、はじめの部分をイミディエイト・サイドシフト(またはイミディエイト・マンディブラ・トランスレイション)、あとのほうの部分をプログレッシブ・サイドシフト(またはプログレッシブ・マンディブラ・トランスレイション)と呼んでいる。これを再現するために、全調節性咬合器だけでなく半調節性咬合器にも両者の調節機能を有するものが存在する。
イミディエイト・サイドシフトは側方運動のごく初期に生じる点に特徴がある。つまり下顎が側方運動を起こすと同時に下顎全体がまず作業側に向けてわずか(平均0.4mm)だけ平行移動し、それから側方旋回に移る。この単純なサイドシフトの大きさはその有無を含めて個体間でバラツキ(0~2.6mm)がある。これを咬頭形状に反映させようとする場合には、対合歯の窩に噛みこんだ咬頭頂が作用側に向けてイミディエイト・サイドシフト量だけ移動できるように、対合歯の窩の側壁を削合して隙間centric slideをつくらなければならない。ナソロジーではこの作業が標準ルーチンのひとつとされてきた。しかしこの削合作業は実際にはなかなか難しく、かつ本来ずれがあってはならないセントリックに水平方向のずれを人為的につくってしまうという矛盾があり、大事なセントリック・ストップまで削ってしまうおそれがあった。
保母、高山がレジン製口腔内ガイドテーブルを用いて臨床実験を行なった際に、前歯誘導を修正することによりイミディエイト・サイドシフトを消失させる可能性を示唆する結果が得られた。イミディエイト・サイドシフトはもともと顎関節に緩みがある状態のところに、歯列部にもセントリック・スライドcentric slideがあるために発現すると考えられる。したがってセントリック・スライドがなければ発現しないはずである。いい変えると、歯列部にセントリック・スライドのない安定したセントリックを付与すれば、それに下顎も誘導されてイミディエイト・サイドシフトをともなわない運動をすることが考えられる。そこで、セントリック・スライドは付与せずに、歯の誘導で下顎に安定したセントリックを付与してやればよいことになる。GPT-6(1994)にcentric slideという用語が新たに登場し、しかも不適切用語としてあつかわれているが、これもこのような考え方を反映したものであろう。
したがって、咬合器にイミディエイト・サイドシフトの調節機能は必要ない、と結論される。しかしクラッチを装着して上下顎歯を離開した状態で側方運動を行なわせた場合に、サイドシフトが生じることは事実であるから、上下顎歯が接触しない領域におけるサイドシフトの存在については配慮しておかなければならない。チューイング・サイクルの閉口路(作業側)では、咬頭嵌合位の近傍で切歯点の運動路が側方切歯路に近づくので、そこにサイドシフトがあると咬頭干渉が発現するおそれがある。それを予防するには、咬頭嵌合位から離れて対合歯の咬頭頂どうしが向かい合うあたりではサイドシフトを考慮し、咬頭嵌合位の近傍ではそれが除かれた状態に咬合器を調節すればよいことになる。これは水平側方顆路をベネット角で調節するのがよいことを意味している。このように考えて咬合器の水平側方顆路調節機構はベネット角のみで十分であると、結論した(保母、高山 1993)。イミディエイト・サイドシフト調節機構を備えた咬合器ではその目盛りをゼロとし、プログレッシブ・サイドシフト角調節機構をベネット角調節機構とみなして使用すればよい。したがって、咬合器はベネット角調節機構を備えた半調節性咬合器を用いるのがよく、イミディエイト・サイドシフト調節機構は不要である。
【切歯指導機構】
咬合器の切歯指導機構については、従来その果たすべき機能とその実現方法がともに明らかでなかったので、結果的に顆路指導機構に比べまったくといってよいほど重要視されなかった。最近の研究により顆路誘導よりむしろ前歯誘導のほうが重要であることが明らかになった(保母ら 1995)ので、必然的に切歯指導機構の重要性が増大し、切歯指導の機構とその活用方法の明確化が必要になってきた。
天然歯の歯列模型を咬合器上にマウントし、切歯指導桿の半球状の先端で水平な切歯指導板上に盛ったレジンを形成すると、ドーム状に彎曲した凹型の陥没部分ができあがる。その形状から本来の切歯指導板の形状が、通常の咬合器に咬合高径の保持を目的として取りつけられている平面板のような単純なものでないことが理解できるであろう。ただし、上記のレジン上に形成された凹型ドーム形状は、切歯路の形状を表したものでなく、また上顎前歯部舌面の凹型ドーム形状を裏返したものでもなく、切歯点の動きにともなって切歯指導桿の半球状先端部により形成された包絡面にすぎない。
前歯誘導を前歯部の1点、たとえば切歯点を標点として3次元6自由度の計測が可能な電子的下顎運動計測装置により計測すると、その運動軌跡は水平面投影でも前頭面投影でもちょうど矢印の頭部のように屋根状のかたちを呈し、正常咬合者では偏心運動中に上下顎歯が接触滑走する2~3mmの範囲ではほとんど直線状になる。このことは電子的下顎運動計測装置を用いなくても、水平面投影についてならば、ゴシック・アーチ・トレーサを用いれば誰でも視覚的に確かめることができる。
運動軌跡が直線性を有するこの部分はポッセルトの図形と呼ばれる切歯点の運動範囲菱形柱の上面において、咬頭嵌合位の前方で半径2~3mmの部分に現われる凸型の三角ピラミッドに相当する。その三角ピラミッドの稜線の水平面投影や前頭面投影がそれぞれゴシック・アーチ形状の水平側方切歯路角であり、前頭側方切歯路傾斜度になる。この凸型三角ピラミッドを裏返したのが樋状切歯指導板の形状ということになる。したがって、切歯指導桿の先端が半球ではなく尖った形状のものであると考えると、Gysi、Fischerの提案した樋状形状が切歯指導板の自然な姿であることが理解できる。ちなみに樋状切歯指導板は形状が直線的なため、調節値が定義しやすいという特長を有しており、樋状切歯指導板の中心溝の矢状傾斜が矢状前方切歯路傾斜度に対応し、側翼の傾斜度が前頭側方切歯路傾斜度に対応している。
調節性樋状切歯指導板と組み合わせる切歯指導桿の先端はブレード(刃)状につくられており、その刃面は水平方向に向いている。これが接する樋状切歯指導板の中心溝は長方形の短冊状で、その横幅は切歯指導桿のブレード状先端の横幅に等しく、長辺は前後方向を向き、その傾き角度(切歯指導板矢状傾斜度)が調節可能になっている。この短冊状部分を樋状切歯指導板の底面と呼んでいる。指導板底面の左右両側には2枚の側翼が底面の両側長辺に密着して取りつけられており、この両側翼の底面に対する傾き角度(切歯指導板側翼角)がちょうど航空機の両翼後辺にあるフラップのようにそれぞれ調節可能になっている。このような調節性樋状切歯指導板と先端をブレード状にした切歯指導桿をともに咬合器に装着することにより、歯列模型上の上下顎歯による誘導とは完全に独立したかたちで、咬合器による下顎運動の模擬が可能になる。
側翼角は指導板底面に対する傾き角度として定義されている。この角度は前頭面投影における角度とは相違し、その違いは矢状傾斜度が大きくなるほど大となるので、理論的演算にあたっては、立体幾何学的な補正が必要となる(高山 1993)。また切歯指導板による前歯誘導では、切歯点から前下方に離れた位置にある切歯指導桿の尖端が標点になるので、切歯点からの位置の補正が必要である。
以上から、咬合器には樋状切歯指導板と、それと対になった先端の尖ったまたはブレード状の先端を有する切歯指導桿を備える必要があると結論できる。なお、上述したレジン製凹型切歯指導板と半球状先端部をもつ切歯指導桿の組み合わせでも、正しく調節された樋状切歯指導板と尖頭状切歯指導桿の組み合わせとほぼ同等の効果を発揮することができる。
【咬合器の新選択基準】
ここまで述べてきた咬合器の備えるべき必要条件の検討結果を総括すると、咬合器の新しい選択基準として次に述べる事項をあげることができる。
1)信頼度の高い堅牢なセントリックラッチを備えていること。
2)作業側顆路はトランスバース・ホリゾンタルアキシス上を真横に向かうこと。
3)直線状の顆路と矢状顆路傾斜度調節機能をもつこと。
4)イミディエイト・サイドシフトの調節機構をもたないこと。
5)調節性樋状切歯指導板およびそれと対をなす切歯指導桿の組み合わせ、またはそれと同等な機能を有する切歯指導機構を備えていること。