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咬合性外傷

【読み】
こうごうせいがいしょう
【英語】
Occlusal trauma
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
咬合が原因で顎口腔系の受圧機構に生じた外傷性の損傷をいう。マイクロトラウマのひとつと考えられる。従来はとくに歯周組織について歯周疾患との関連から重視されてきた。現在では顎口腔系に拡大して考える場合も多い。
咬合性外傷を生じる場合には、
1)顎口腔系の発揮する力が、異常に大きい、または持続的に加わるために外傷性の損傷が生じる場合。
2)顎口腔系の発揮する力は正常であるが、咬合干渉により為害性の高い種類の力に変換されて外傷性の損傷が生じる場合。
3)顎口腔系の発揮する力が正常でも受圧機構が不完全なために結果として外傷力となる場合。
の3種類が考えられる。1)の例としてはブラキシズムやクレンチング、2)の例としては非作業側の干渉やディスタライジング・フォースにより顎関節に異常な力の加わる場合、早期接触歯に加わる咬合力、3)の例としては円板前方転位を生じた顎関節、歯周組織が疾患により減少した場合などがあげられる。
咬合力によって引き起こされる歯周組織の外傷としては歯根膜の牽引や圧迫により出血や線維の断裂、挫滅などの外傷の他、変性、萎縮、壊死などの退行性変化をともなう。臨床的には歯の動揺が特徴でX線像では歯根膜腔の拡大などをみる。1次性(原発性)咬合性外傷と2次性(続発性)咬合性外傷がある。前者は、正常な歯周組織に異常な咬合力が作用して起こる外傷をいい、後者は、すでに慢性辺縁性歯周炎により抵抗力の弱まった歯周組織に咬合力が作用して起こる外傷をいう。慢性辺縁性歯周炎が進行し、歯槽骨の吸収の高度なものでは、もともと十分耐えることができた咀嚼圧でさえ、残された歯周組織には非生理的な力として加わるため動揺歯には固定などの処置が必要となる。
Ross(1970)は、咬合性外傷の原因として1)咬合力、2)上下顎歯の咬合状態、3)歯周組織の健康状態および抵抗性、以上の3つの要因の不調和をあげている。歯や歯周組織に加わる咬合力の代表的なものは、咀嚼圧と嚥下圧である。咀嚼の初期に上下顎歯の間に食片がおかれているときは数10kgに及ぶ咬合圧が加えられるが、咀嚼の末期や嚥下時には、その咬合力はかなり弱いものになっている。咬合力は機能時と非機能時とでは異なり、機能時の生理的な咬合力は歯周組織に対して為害作用が少ない。しかしブラキシズムや悪習慣による非生理的な運動をともなって発生する咬合力は、為害作用が大きいとされている。生理的な場合、1日のうちに上下顎歯は約4~10分しか接触せず、またその際に加わる荷重も1cm2あたり1.4~3kg程度である。これに対しブラキシズムのような非生理的な習癖のある場合は、歯の接触時間は1日最大4時間に及び、また加わる荷重も1cm2あたり20kgを越えるといわれる(Lundeen 1969)。また加わる力の方向も、生理的な場合は歯に対して垂直方向に加わるが、非生理的な圧力は水平方向に向かうことが多い。
上下顎歯の咬合状態も、また咬合性外傷の原因としてあげられ、その代表的なものに早期接触がある。中心位の早期接触と偏心位の早期接触は、ともに歯周組織に対して悪影響を及ぼすが、中心位と非作業側の早期接触はとくに歯周組織に対して為害作用が大きいとされている。その他、不正咬合や歯の喪失、齲蝕、不完全な補綴処置なども、正常な上下顎歯の接触関係を損ない、咬合性外傷の原因となる。また、個々の歯の形態異常や咬頭斜傾なども咬合性外傷と関連をもっている。
歯周組織の健康状態と抵抗性は、咬合性外傷の発症と関係が深い。歯周組織の抵抗性を低下させる代表的なものに、慢性炎症がある。このような症状が長くつづくと歯肉にポケットが形成され、歯根膜は炎症性破壊を受け、歯槽骨は吸収される。咬合性外傷によって引き起こされる歯周組織の病理的変化は、歯肉にはほとんどみられず、もっぱら歯根膜線維を中心に認められる(石川 1971)。歯周組織に強い圧力が加えられると、歯根膜の血管が圧迫されて、血行停止、血栓形成、出血などの循環障害が起こる。その結果、歯根膜線維には硝子様変性や壊死が起きる。圧迫された部位やそれに隣接する歯根膜、また骨髄には破骨細胞が形成され、骨は吸収される。しかし、このような病理的変化は、慢性炎症に付随して現われることが多いので、咬合性外傷によって引き起こされる病理的変化だけを区別して認めることは困難である。
咬合性外傷の臨床症状は、歯の動揺、移動、咬耗、下顎運動の異常、咀嚼筋の異常緊張、歯周組織の疼痛などがあり、X線像では歯槽硬線の消失、歯根膜腔の拡大、歯槽骨の吸収、歯根の吸収、過セメント症などが認められる。咬合性外傷の治療法は、咬合圧を各歯へ均等に分担させることにあり、その手段として咬合調整が行なわれる。また、かなり進行した咬合性外傷では、オクルーザル・リコンストラクションが施術される。咬合性外傷はしばしば慢性の辺縁性歯周炎を併発しているので、そのような場合には炎症に対する治療法も行なわなければならない。
⇒外傷性咬合、外傷